基準によって金額が大きく変わる死亡事故の慰謝料
死亡事故の示談金というと総額の方に目が行きがちですが、実際は内訳が細かく、それぞれの項目をトータルしたものを俗に『示談金』と言っています。
死亡事故の場合、示談金の内訳は『逸失利益』・『死亡慰謝料』の2つが大きな割合を占めています。
逸失利益は死亡事故の被害者が生存していた場合、亡くなるまでに得ていたはずの給料(利益)を差します。
死亡慰謝料は、死亡した本人、もしくは遺族の精神的被害に対する損害賠償のことを言います。
実は、死亡慰謝料は死亡した本人に対する慰謝料と遺族に対する慰謝料は別々で、2種類あります。
死亡した本人に対する慰謝料は、『死亡事故の被害者は精神的な苦痛があった』ということに対して死亡事故の被害者本人に支払われるものです。
しかし、慰謝料を受け取るべき被害者は亡くなっているため、慰謝料は被害者の相続人が受け取る事になります。
一方で遺族に対する慰謝料は、『家族(親族)が亡くなった事による精神的な苦痛』に対して支払われるもので、判例では法定相続権のない親や孫に慰謝料の支払いが命じられたものもあります。
慰謝料の基準は自賠責・保険会社・弁護士で異なる
では、死亡した本人に対する慰謝料の金額はいくらになるかと言うと、自賠責保険で400万円です。
自賠責保険は『広く浅く被害者救済を行う』ものですので、金額も最低基準になります。
では、自動車保険会社が支払う慰謝料はと言うと、保険会社や被害者の年齢等で変わりますが、一般的に『一家の支柱であった場合、1700万円』、『18歳未満で未就労の場合、 1400万円』、『65歳以上の場合、1250万円』、『その他の場合、1450万円』が基準となります。
弁護士基準は裁判での判例をもとに請求するため、3つの中では一番の高額となります。
『一家の支柱であった場合、2800万円』、『母親または配偶者であった場合、2400万円』、『その他の場合、2000~2200万円』がおおよその目安になります。
遺族に対する慰謝料は、自賠責保険で『遺族が1人で550万円、2人で650万円、3人以上で750万円』で、扶養する家族がいる場合にはさらに200万円追加されます。
自動車保険会社の場合は、会社ごとに変わりますが自賠責保険とほぼ変わらないくらいのことが多いです。
弁護士基準では、相手方に請求する死亡慰謝料の中に含まれることが多いのですが、死亡事故の被害者と遺族の間で特別な事由があるなどで、50~200万円の増額をすることもあります。
例えば、『死亡事故の遺族が、妻と子供1人(扶養義務有)』であった場合、
自賠責基準ならば、400万円+650万円+200万円=1240万円
保険会社基準ならば、1700万円+650万円+200万円=2550万円
弁護士基準ならば、2800万円+α
となるため、自賠責と弁護士基準ならば2倍以上の開きがある事が分かります。
死亡事故で保険会社の示談内容が低すぎると感じた場合には、弁護士に相談して内容を精査してもらった方が良いでしょう。
【注:自賠責保険の基準は、令和2年4月1日以降発生した事故を基準としています】
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死亡事故における弁護士費用は獲得金額の割合によって決められる。あるいはもともとの提示金から増額させた金額の場合もある。死亡事故の慰謝料の相場は非常に高額になるため、弁護士に相談をするのが望ましい。
家族が死亡事故に遭った場合は、いち早く弁護士に相談するのが望ましい。大切な人を死亡事故で亡くしたなかで冷静に判断するのは難しいものの、弁護士選びは慎重に行わないとならない。
死亡事故のように損害賠償額が大きくなったり、加害者との争点が生まれたりしそうな場合ほど、弁護士の力が求められる。その時、できる限り交通事故に強い弁護士を選ぶのが望ましい。
自賠責では死亡事故の保険金支払額の上限が3000万円で、損害賠償金額がそれ以上であっても示談金を3000万円ほどしか提示してこない保険会社が多いため、事前に弁護士に相談をしておくとよい。
死亡事故の示談交渉の時に弁護士費用特約は必ず利用できるとは限らず、死亡事故のように保険金が高額の場合には弁護士費用が弁護士費用特約で賄いきれないこともある。