死亡事故の損害賠償金で遺留分は申し立てられる?
死亡事故の場合、相続が発生しますので法律と綿密な関係があります。
「うちは子どもたちが争うような遺産はないし。」、「遺言書を書いているから、もめることはない。」とおっしゃる方もいますが、実際にはそうではありません。
裁判にまで発展した遺産相続問題のうち3割は遺産の金額が1000万円以下で、裁判にならず調停や親族間での話し合いで終わった分も考えれば相当な割合があると考えられます。
また、遺言書を書いてあっても揉めることもあるうえに、死亡事故による保険金は金額が数千万円、時として1億円を超える時もあるため、「遺言書の遺産は200万円ほどだったから、遺族も遺言書作成時には長男が全部引き継ぐことでみんな納得していたのに、死亡事故の保険金のせいで他の兄弟も異議を言ってきた。」ということが多々あります。
遺言書がある遺産相続でもめた場合、重要となるのが遺留分になります。
例えば、亡くなったAさんにはAさんの妻Bさん、Bさんとの子Cさんがいて、前妻との間にDさんがいたとします。
Aさんは離婚時にDさんにちゃんとしてあげられなかったことを悔いて、『遺産のすべてをDさんに譲る』という旨の遺言書を誰にも内緒で作成していたとしたら、BさんとCさんは聖人君子でもない限り、異議を申し立てると思います。
遺言書も遺留分も万能ではない
『遺言書が無効』という主張も考えられますが、遺言書が法的に有効であれば『遺留分の請求』がされます。
遺留分とは、法定相続人が最低限保証される相続の権利を言います。
先ほどのケースでは1/2が遺留分となりますので、1/2は遺言書通りの相続となり、残りの1/2で法定相続が行われるため、Bさんは1/2×1/2=1/4、Cさんは1/2×1/2×1/2=1/8、Dさんは遺言書分の1/2と子分の1/8を相続することができます。
ただし、遺留分は配偶者と子(もしくは代襲相続人)・直系尊属(親や祖父母)にしか認められていないため、兄弟や甥姪などには遺留分がありません。
そのため、子どもがおらず両親がすでに亡くなっているEさんが妻のFさんに遺産を全額相続させるとの遺言があった場合、Eさんの兄弟Gさんは通常相続ならば1/4受け取れるのですが、遺言書がありGさんには遺留分がありませんので、全額Fさんが相続することになります・
ここで問題となるのが、『死亡事故の損害賠償金は遺言の遺産に含まれない』ということです。
そのため、Aさんは遺言書を書いてあるから安心だと思っていたのにもかかわらず、死亡事故の損害賠償金の分け方で大いに揉めることが多々あります。
例えば、先ほどのAさんの遺言書の遺産が800万円で、死亡事故の損害賠償金が5000万円とした場合、
Bさん(妻)遺留分200万円+損害賠償金2500万円=2700万円
Cさん(子)遺留分100万円+損害賠償金1250万円=1350万円
Dさん(遺言書で指定された子)遺言書と遺留分500万円+損害賠償金1250万円=1750万円
と法的にはなるのですが、「損害賠償金が入るのだから、遺留分は請求するな。」とか、「遺言の800万円はそちらに渡すので、死亡事故の損害賠償金はBとCでもらう。」と、各々に勝手な主張をして、死亡事故の示談が大幅に遅れることがありますので、早い段階で弁護士に介入してもらうとよいでしょう。
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死亡事故の遺族間で示談の意見が合わない場合には、早い段階で弁護士に介入してもらう方が、円滑に話し合いがすみ、加害者との示談交渉に臨める。
死亡事故の示談金を保険会社が支払う場合は、最速でも死亡事故から3か月程度かかるので、金銭的な問題がある場合には早目に弁護士に相談をする方が良い。
家族が死亡事故に遭った場合の示談のタイミングは、遺産相続が始まった際に始めるか、加害者の懲罰をどのようにしたいかを遺族が考えて行うとよい。