高齢者の死亡事故の保険金が思っていたよりも少ない理由とは
弁護士に寄せられる相談の中で、「高齢者である父の死亡事故の示談をしているが、保険会社から提示されたのは2000万円ほどで少なすぎる。自賠責保険を見ると死亡時には3000万円支払われるはずなのに、保険会社が不当に低い金額を言ってきている。」といったものがあります。
保険会社の対応は後述しますが、ひとつ大きな勘違いがあります。
自賠責保険は、生命保険の様に死亡時に定額の保険金が支払われるのではなく、計算に基づいた損害賠償額で上限3000万円まで支払われるので、死亡事故の被害者が高齢者であったり、過失が著しく大きい場合には減額されます。
例えば、67歳の男性の死亡事故で、家族は妻と子が2人、年金暮らしであったとします。
自賠責基準で支払われる保険金を計算すると、
・死亡慰謝料 死亡事故の被害者本人分 350万円 遺族2人分 650万円 合計1000万円
・死亡逸失利益 厚生年金29年度平均174万円のケースで、生活費控除50% 平均余命17.8年で計算 1548万円
ここに中間利息控除係数をかけると、実際に支払われるのは980万円
・葬儀代 60万円
合計すると2040万円が自賠責保険から支払われることになるため、被害者が高齢者であれば冒頭の2000万円の話は保険会社の横暴と言えないと言えます。
高齢者でも裁判所基準になると変わってくる
上記の内容を見てがっかりされた方もいるかもしれませんが、あくまでこれは自賠責基準での高齢者の死亡事故の保険金の話で、裁判所が出した判例基準だと話は大きく変わります。
先ほどのケースを判例基準で計算してみると、
・死亡慰謝料 死亡事故の被害者が一家の支柱 2800万円
・死亡逸失利益 厚生年金29年度平均174万円のケースで、生活費控除50% 平均余命17.8年で計算 1548万円
ここに中間利息控除係数をかけると、実際に支払われるのは980万円
・葬儀代 150万円
合計3930万円になるため、自賠責基準と比べて保険金が1890万円も多くなることが分かります。
しかし、保険会社に判例基準の請求をしても、自賠責基準を盾に応じることはほぼありません。
「判例では~…」と言ったところで、「では、裁判をしてください。」と言われてしまいます。
一般人が裁判を起こすには金銭的にも事務的にも大変な労力を伴うため、あきらめる方がほとんどだからです。
そのため、弁護士を雇って保険会社と示談交渉することをお勧めします。
保険会社からすると弁護士は本当に裁判も辞さない相手ですので、負けると分かっている裁判をするよりも示談で和解した方が金銭的にも時間的にも得だと判断するからです。
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仕事が忙しくて死亡事故の賠償金について話し合う時間がなかったら、弁護士を代理人にすると、賠償金の相場を知っているので、適正な賠償金額で保険会社と示談交渉してくれる。
ご家族が死亡事故に遭われると、正常な判断ができなくなる可能性があります。抜けのないよう、損害賠償を全て請求するためにも、その種類についてはしっかりと把握しておく事が大切です。
死亡事故と言えども、過失割合や損害賠償額によっては、死亡した側の損害賠償額が大きくなり、遺族に支払い義務がのしかかるケースもある。
保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
死亡事故における慰謝料の相場は、高齢者と子供、独身の男女などで大きな差はない。しかし、生前の時にどういった立場でいられたのかという部分が関わってくる。