死亡事故で生命保険を受け取ると自動車保険は受け取れない?

自動車による死亡事故の場合、加害者もしくは加害者が加入している保険会社から損害賠償金が支払われるのですが、自動車保険に未加入であったり、加入している保険の限度額では損害賠償額が足りなかったりすることもあります。
加害者や保険会社に損害賠償請求をすることになるのですが、加害者にそれだけの資産がなければ支払ってもらえないこともしばしばです。
そのような時に心強いのが、被害者が自動車保険とは別に生命保険に加入をしていて死亡保険金を受け取れるというケースです。
死亡事故の示談は早くても2カ月、時間がかかれば何年もかかるため、遺族はその間経済的に苦しくなることもあります。
しかし、生命保険の死亡保険金が支払われれば、遺族の生活が守られるだけでなく、示談金交渉も落ち着いて行うことができます。
自動車保険と生命保険の趣旨は違う
ここで、「自動車保険から損害賠償金が貰えるのに、生命保険会社からも貰うと、二重取りになるのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
1964年の最高裁の判決では、「交通事故などの不法行為によって死亡したときに発生する損害賠償請求額から生命保険金は差し引くべきではない」と判断をしています。
この判例を受けて、死亡事故で生命保険から保険金が支払われた場合でも、加害者から受け取る損害賠償金が減少することはありません。
この考えの大元となっているのが、「生命保険金は死亡事故の被害者が支払った対価により受け取るもので、死因が別の物であっても当然支払われるものであるから、損害賠償金から差し引くべきでない」という考えからです。
また「生命保険の保険金は、加害者の損害賠償金を減少させるという利益のために、被害者が保険契約をしているわけではない」という考え方も併せてされるため、いくら加害者や保険会社が「生命保険から高額の保険金を受け取られるのですから、損害賠償金に関しては大目に見てください」と言うのは、大きな間違いなのです。
そのため、加害者からこのような申し出があった場合には、先の判例の話をして拒否する姿勢を示すことができます。
ただし、自損事故保険、搭乗者傷害保険に関しては、損害賠償金が支払われる傷害保険や生命保険と異なり、自動車の所有者が保険料を支払う見返りとして支払われるものなので、死亡事故の被害者遺族がこれらの保険金を受け取り、自動車の所有者に損害賠償請求をした場合には、慰謝料請求額から相殺という形で減額される可能性があります。
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死亡事故による慰謝料は、本人に対する慰謝料と近親者慰謝料があるが、近親者慰謝料を積極的に請求することにより、遺族の悲しみを訴えて慰謝料が増額する可能性がある。
家族が死亡事故に遭った際に請求できる慰謝料は死亡慰謝料と呼ばれ、死亡した被害者本人に対する本人慰謝料と被害者の近親者に対する慰謝料といった内訳は2種類に分別される。
死亡事故で加害者に損害賠償能力がない場合、被害者遺族が十分な損害賠償金を得られないことがあるが、加害者が自動車保険に加入していたのならば、その保険会社に請求できる。
自動車保険と一口に言っても、補償対象が特約により細かく分類され、補償の条件が細かく指定されているので、死亡事故のような大きな事故であっても保険金が支払われないこともある。
保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
