死亡事故で遺族に損害賠償請求された場合はどうなる?
死亡事故は本人はもちろん、残された遺族にも痛ましい事故なのですが、死亡した方に過失が大きいこともあります。
対向車がセンターラインをオーバーしての衝突事故の場合、センターラインをオーバーした側に過失があります。
しかし、センターラインをオーバーした自動車の運転手が死亡、追突された側が怪我という死亡事故の場合、生存している被害者が死亡した加害者側に請求することになります。
通常、衝突した側の自動車に自動車保険がかかっていれば、被害者は保険会社に請求することになります。
自動車保険に加入していなければ、自賠責保険に請求という順番になります。
それでも、請求している損害賠償請求額に足りない場合には、オーバーした分は加害者に請求することになります。
そのため、加害者が生存している交通事故で加害者が払わない場合には、加害者に預金や不動産などの資産があれば裁判所の差し押さえで精算され、無ければ分割での支払いで給与の差し押さえをすることも出来ます。
死亡事故の加害者遺族は相続の選択を慎重に
しかし、加害者が死亡した死亡事故の場合には、損害賠償の請求先は、加害者の法定相続人になります。
仮に、損害賠償請求の金額が3000万円で、加害者名義の預金が2000万円あったとした場合、足りない1000万円は法定相続人が支払うことになります。
加害者に妻と子供が1人いれば、妻は2分の1、子供は2分の1の負担になります。
子供が1人の場合には、子供だけに100%の損害賠償請求が行くことになります。
しかしながら、加害者の遺族にそれだけの資金力があるかどうかはかなりの未知数で、加害者の遺族には支払い能力がないことの方が多いです。
反対に、死亡事故の加害者の遺族からすると、「死んだ家族が悪いのは分かるが、莫大な損害賠償金を支払えない」と考えることもあります。
加害者・被害者の双方の死亡事故の場合、被害者家族には損害賠償請求権が、加害者家族には損害賠償責任が相続されます。
あくまで相続権ですから、加害者家族の方は相続放棄をすれば、損害賠償金を支払わなくてもよくなります。
被害者側からすれば納得が出来ない話かもしれませんが、事故を起こしたのはあくまで加害者本人で、加害者の家族が起こしたものではないため、そこまでの責を強要することはできません。
よく、「子供がおこした交通事故なんだから、親が責任を持って払え!」という話を聞きますが、法的には子供が未成年でもない限り、親に責任はないことになります。
逆に、執拗に要求をした場合には、被害者といえども強要罪や脅迫罪となることもありますので注意が必要です。
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死亡事故の相続人で意見が分かれた場合には、個別の示談を加害者側に申し出ることができるが、相続人同士で意見がまとまっている方が良いので、相続人同士の仲介を弁護士に依頼すると良い。
死亡事故の損害賠償金を受け取る人は、亡くなった被害者から請求権を相続した相続人である。他の相続人が、代表者による示談交渉を反対した場合は、個別に示談交渉できるよう依頼すると良い。
死亡事故の被害者に借金があった場合、遺族は相続放棄した方が良いケースもある。相続放棄をすると死亡事故の損害賠償金を受け取れないが、遺族に対する慰謝料などは受け取れる。
介護人が死亡事故に遭うと、被介護人の処遇が問題となるが、保険会社からの介護料の補填はないので、通常の保険金で被介護人の処遇を考える必要がある。
被相続人に多額の借金がある場合には相続放棄をすることが多いが、死亡事故の場合には保険会社の保険金請求権も放棄してしまうことになるため、相続放棄する前に弁護士に相談した方が良い。