家族が死亡事故に遭い相続放棄しても請求できる慰謝料とは
世間一般では、『自動車の死亡事故ならば、相手側から保険金がいっぱい出て、遺族は多額の保険金が受け取れる。』と思っている人が、いまだに多くいます。
しかしながら、死亡事故の被害者が生前から多額の借金を負っている場合、死亡事故で支払われる損害賠償金が借金の額を下回る事があります。
例えば、個人事業主で5000万円の借入があり、死亡事故で損害賠償金が4000万円支払われる場合には、1000万円の負の遺産相続が発生するため、遺族側からすると相続するか悩みどころとなります。
死亡事故の被害者の子が商売を引き継ぐ場合には、借金がある事を承知で遺産相続をした方が良いこともありますが、商売を引き継がない場合や借金の理由が個人の浪費などで遺族が借金を引き継ぐメリットがない場合には、相続放棄という形が取られることが多いです。
相続放棄の手続きを家庭裁判所に行い認められた場合には、相続人ではないとされるため相続権が消滅します。
そのため、故人の借金を支払わなくても良い代わりに、死亡事故の損害賠償金を請求する権利も消滅しますので、受け取ることができなくなります。
相続放棄をしても受け取れる金銭もある
『死亡事故の損害賠償金を請求する権利も消滅しますので、受け取ることができなくなります』と書きましたが、一部に例外があります。
損害賠償金の内訳は大きく分けて2つあり、死亡事故の被害者(故人)に対する損害賠償と、被害者遺族に対する損害賠償があり、前者は相続権に含まれるため相続放棄をすると受け取れませんが、後者は遺族に対する損害賠償であるため、相続放棄をしていても受け取ることができます。
遺族に対する慰謝料などがこれにあたります。
また、被保険者が死亡事故の被害者で、受取人が相続人といった生命保険・損害保険などは相続の対象外となるため、相続放棄をしても受け取ることができます。
死亡事故の多くは、被害者の遺族に対して数千万単位の損害補償金が支払われるため、そうそう相続放棄がされることはないのですが、住宅ローンを返済中である場合には要注意です。
住宅ローンを借入する際には、団信と呼ばれる生命保険を同時に契約して、死亡時に団信から残債分の生命保険が銀行から支払われるというものがありますが、団信への支払いを抑えるために子や親・兄弟を連帯保証人として契約することがあります。
もし、住宅ローンの契約者が死亡事故に遭い相続放棄をした場合、住宅ローンは連帯保証人が支払わなければいけなくなります。
連帯保証人に支払える余裕があればよいですが、連帯保証人自身も住宅ローンを支払っているなどで支払いが困難である場合には、故人の自宅のみならず連帯保証人の自宅も競売となる危険性があります。
死亡事故の被害者の遺産相続が複雑化すると予想される場合には、早期から弁護士に相談をする方が良いでしょう。
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死亡事故による自動車保険の保険金は相続財産となるが、生命保険は相続に含まれないため、遺産放棄をしてから生命保険を受け取った方が、手元に残る金額が大きくなることがある。
家族が死亡事故に遭った場合、遺族は相続の手続きをしなければならない。ある程度期間が設けられ、注意しなければならない点もあるため、把握しておくべきである。
死亡事故で加害者が亡くなった場合には、加害者の法定相続人に損害賠償請求をすることができるが、相続放棄をすることで、損害賠償請求を免れることができる。
死亡事故の遺族は、葬儀や示談・遺産相続など多数の手続きが必要となってくるため、弁護士にアドバイスをもらいながら手続きを進めていく方が良い。
死亡事故により被害者遺族が現在住んでいる住宅に住むことが困難となっても、加害者側に損害賠償請求することは困難であるので、弁護士に依頼をして示談内容を充実させる方が現実的である。