被害者に過失割合がある死亡事故では保険金が減額される?
死亡事故の場合、死亡した被害者にも過失割合があることがあります。
走行中の自動車事故の場合、ほとんどの場合で双方に過失割合が科されるため、死亡したといっても過失割合を免れることはできません。
また、死亡事故の死亡者であっても、「センターラインをオーバーして対向車線にはみ出して、対向車と正面衝突して死亡したが、相手方は怪我で済んだ」というような場合には、過失割合は非常に重く科されることになります。
交通事故によって過失割合が問題となるのは、過失割合によって支払われる保険金が減額されてしまうからです。
死亡事故で過失がなければ5000万円の保険金が支払われるケースでも、過失が2割あれば2割減額の4000万円しか支払われないことになります。
そのため、交通事故の当事者同士で過失割合の駆け引きが起こることになり、時として法廷闘争にまで発展することがあります。
特に死亡事故の場合保険金額が大きいため、過失割合が1割違うだけでも何百万円もの差になり、双方が譲らないということが多くあります。
過失が9割でも保険金が9割減額とは限らない
では、死亡事故の死亡者の過失割合が、9割や10割といった過失割合が高い場合、保険金の減額はどうなるのでしょうか?
自損事故による死亡事故で過失割合が10割の場合には、保険金はどこからも支払われません。
つまり、「死亡事故の責任は全て運転手のせいなので、自賠責保険や保険会社は補償しません」ということになります。
しかし、過失割合が9割であった場合には、「9割は加害者だが、1割は被害者」ということになり、「保険は被害者の救済のためにある」という考え方により、自賠責、保険会社共に保険金を支払います。
では、過失割合が9割ある場合には、保険金が1割しか支払われないかというと、保険会社や事故の内容により変わります。
保険会社は基本的に過失割合に応じた保険金の減額をしますが、過失が大きい時には保険金自体支払わないことがあります。
過失割合が9割の事故でも、「右折しようとしたときに、少し強引に曲がって直進車とぶつかった」と、「暴走していて、脇道から出ようとしたときに自動車とぶつかった」とでは、保険会社としても心証が違います。
一方、自賠責保険は自動車事故の被害者の救済のための保険ですので、過失割合が多い場合でも単純な減額になりません。
死亡事故の場合、過失割合が7割未満だと減額はありません。
7割以上8割未満で2割減額、8割以上9割未満で3割の減額、9割以上10割未満の場合で5割の減額になります。
そのため過失割合が9割の死亡事故であっても、自賠責保険の死亡保険の限度額が3000万円なので、5割減の1500万円までは支払われる可能性があります。
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交通事故の損害賠償金は被害者のものであるが、死亡事故の場合は被害者が死亡しているために、相続人が損害賠償金請求の権利を有することになる。
加害者が補償内容の充実している保険に加入していないと、死亡事故の被害者遺族が弁護士に依頼しても、十分な損害賠償金が支払われないことがある。
任意の自動車保険に加入せず自賠責保険のみに加入している「無保険車」の割合が、全国的に増えているため、死亡事故などの大きな事故の際には被害者に対して保険金が足りないなどの問題が生じている。
死亡事故の被害者の逸失利益の計算には収入証明が必要となるが、職種により収入証明の仕方が違うために、注意が必要である。
死亡事故で支払われる保険金は基本非課税であるが、物品に対する損害補償金などは課税対象となるので、税金の納め忘れには注意が必要である。