死亡事故の裁判が増加している、その背景とは?
交通事故は、1970年をピークに減少の一途をたどっています。
2005年から比較しても、10年で40%減少していますので、死亡事故自体も微減の傾向にあります。
しかし、交通事故の裁判件数は、2003年の3252件から2015年には1万5千件以上となっており、単純計算でも5倍以上の訴訟数になっています。
民事や刑事などの全体の裁判数は過払い請求と言う特需があったため一時期増大しましたが、過払い請求がひと段落した、数年前から減少の一途をたどっていることを考えると、交通事故の裁判の伸び率は異様と言えます。
交通事故関係、特に死亡事故に関する訴訟数が増えた背景には、様々な理由があります。
1つはインターネットの普及により、以前ならば保険会社の言いなりで示談に応じていた交通事故の被害者が、ネットの情報により「交通事故の場合は裁判した方が保険金が多くもらえる」と言うことを認知し始めた点です。
裁判をした方が、保険会社から支払われる保険金が数倍になるのであれば、弁護士費用を支払っても得となりますし、死亡事故のように保険会社からの提示される示談金額がもともと高額の場合には数千万単位で変わることもあり、裁判する被害者の割合はますます増えていくことになると思われます。
弁護士費用特約の功罪
もう一つの理由に、10年ほど前に自動車保険の特約に弁護士費用特約が増えたことです。
以前から、「死亡事故の裁判をすれば高額の保険金がもらえる」と知っている人もいましたが、大きな一つの壁が弁護士費用のことでした。
勝訴の確率が非常に高くても、「手付金に50万円、裁判費用に30万円、成功報酬が200万円。」と言われてしまうと、手付金や裁判費用が用意できずに泣く泣く示談と言うケースが多くありました。
特に、父親などの家計の中心人物の死亡事故の場合、裁判どころか生活費にも困り、数千万円が受け取れるような事故内容にもかかわらず、500万円ほどの示談に応じてしまうようなこともありました。
弁護士費用特約は、おおよそ300万円までの弁護士費用を保険会社が支払う特約で、加害者・被害者にかかわらず利用することができます。
また弁護士費用特約の保険料金も年間1000~2000円ほどであることから、お守り代わりに加入する人が増えたのも原因の一つです。
そのため、特約の加入者が弁護士費用を気にすることなく、弁護士に依頼することができるようになったため、裁判数が爆発的に増加したとみられます。
被害者保護の観点から、弁護士に死亡事故の相談が気軽に行えるようになったことは歓迎すべきことなのですが、新たな弊害も起こっています。
それは、裁判の長期化という問題です。
保険会社と被害者がもめて長期化すると言うこともありますが、裁判所、特に家庭裁判所が裁判数の増加に伴い裁判数が処理できなくなりつつあります。
以前ならば4カ月ほどで結審した裁判が、裁判所のスケジュールがいっぱいで6カ月以上かかるという事例も発生しています。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
死亡事故の対応をご遺族で処理するのではなく弁護士に任せる事で、損害賠償金額が増えたり、各種手続きの手間が省けたりと、様々なメリットがある。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。
死亡事故の刑事裁判において、被害者や被害者遺族に対し様々な権利が認められているため、、弁護士と綿密に打ち合わせをした方が良い。
交通事故で怪我を負ったり、あるいは死亡事故となってしまったりした場合、弁護士に依頼すると被害者の負担を減らせる。弁護士費用特約により、被害者は弁護士費用の負担を減らす事が可能である。
死亡事故を起こして弁護や法手続きなどを相談する国選弁護人と私選弁護人では、活動権限に違いはないが、依頼人が人選できるか否か、依頼できるタイミングなどの相違点がある。