自動車保険の観点から見る、二輪での死亡事故について
自動車対二輪の死亡事故の場合、圧倒的に二輪の運転手が死亡するケースが多いです。
二輪は排気量によって自動車と変わらないスピードで走ることができるにもかかわらず、走行中に衝突事故を起こした場合には、生身の体が地面に投げ出されることとなるからです。
40代以上の方ならば、「以前はバイクに乗るのにもヘルメットがいらなかったのに」と思い出されるかもしれません。
1972年に一部バイクに対するヘルメットの義務化がはじまり、1986年の原動機付自転車に対する義務化まで段階的に強化をして行ったのですが、これはバイク事故の場合は自動車よりも受傷率や死亡率が高かったことが原因です。
近年では、自動車自体はABSやエアバックの標準装備は当たり前で、歩行者を感知して自動で徐行を促したり、追突回避システムの搭載により安全性能が高くなり、自動車の交通死亡事故は毎年減少しています。
しかし、二輪の死亡事故を見るとここ十年は微減か横ばいで推移しており、30年前よりバイク人口は3分の1程に減少しているので、比例していてもおかしくないのですが、実際には二輪による死亡事故の割合は減っていません。
二輪の死亡事故時には保険金額が下がるケースも
では、自動車保険の観点から二輪と自動車との違いを見ていくと、二輪の厳しい状況を見ることができます。
そもそも、二輪であっても自動車であっても、自賠責保険は強制加入のため条件は同じです。
しかし、任意保険に関してはバイクの排気量が小さくなればなるほど、任意のバイク保険への加入率が低くなっていきます。
排気量の大きいバイクのオーナーは、バイクに対する心構えがあるせいか保険加入率も高くなりますが、原付二輪の場合は自転車替わりくらいにしか思っていないオーナーが多く、所有者層も学生や主婦から高齢の方まで幅広くあるため、十分な保険に加入している原付自動車は少なくなります。
そのため、いざ死亡事故に巻き込まれた際に、被害者としては十分な保険金がもらえず、逆に加害者の立場となってしまった時には被害者への補償金が足りず、自腹で不足分を払うというケースもあります。
また、二輪の死亡事故の場合、走行中の事故であることがほとんどです。
走行中と言うことは、二輪運転手に対して安全運転義務が発生しますので、特殊な事例を除いて過失割合が科されることになります。
「出会いがしら事故で自動車の方が悪い!」と言っても、二輪運転手にも事故の責任が負わされます。
「左折の車に巻き込まれた」と言うようなケースでも、先に自動車が左折の合図を出しているにもかかわらず、強引にすり抜けようとした場合には、二輪の運転手の過失の方が多くなると言ったケースもあり、よく見られる自動車の間のすり抜けも厳密に言うと道路交通法違反となる事が多いです。
そのため、二輪の死亡事故の場合、自動車での死亡事故とは過失割合や示談交渉が異なることも多いため、弁護士相談をしてみる方が良いでしょう。
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死亡事故の示談を損保会社からされた際には、親族間の紛争を減らすために損保会社への窓口は一人に絞る、損保会社からの交通事故の示談はすぐに了承しないなどの注意が必要である。
死亡事故の慰謝料は自賠責保険基準で上限1250万円であるが、裁判では2000~2800万円とされることが多いので、大きな開きがあることがわかる。
死亡保険の請求権は法定相続権のある人だが、請求権者が複数の場合には代表した一人が保険会社との示談交渉を行う。
加害者が補償内容の充実している保険に加入していないと、死亡事故の被害者遺族が弁護士に依頼しても、十分な損害賠償金が支払われないことがある。
交通死亡事故で相手側の損害保険会社と交渉する場合、冷静さを保ち話し合う必要があるが、それが無理だと感じたら弁護士に依頼をした方が良い。