遷延性意識障害患者はどのような治療を受ける?
交通事故で受傷した人は、救命救急の治療を受けて、患者の受け入れが可能な医療施設に搬送されます。
頭部を強打した遷延性意識障害になりかねない重傷者を受け入れることができる病院に搬送されると、ICU(集中治療室)で治療を受け、症状が安定するまで24時間治療を受けます。
ICUの一番の目的は生命の維持です。
医療の進歩により、延命の方法にはいろいろな選択肢があり、患者の尊厳とも密接に関わっています。
極めて短時間に、レントゲン撮影やCTスキャン、酸素濃度の測定など必要な検査を行い、検査方針を決定します。
搬送された患者の命が絶たれようとしていると判断した場合、医療チームは、家族の同意を得て延命措置を行います。
延命措置は、寿命と密接に関係しているので、怪我人ともっとも関係の近しい人が治療方法を判断することが求められ、医師の提案に納得したら、書類に署名して医療方針に同意したという意思を明らかにします。
その際、宗教上の理由などにより輸血を拒否する場合や、人為的な延命措置をしてほしくない場合は、家族が医師に治療方針に対して意見を述べる機会が設けられます。
日本の医療現場では、どのような延命措置を行うかは、あくまでも家族の意思を尊重しているのです。
安定期に入ってからが問題
ICU最善の治療を施した結果、救急措置が一段落したら医療チームから患者の病状について説明があり、その後、患者の回復を待って一般病棟に移ります。
付き添い看護をしなくても24時間体制で看護をしてくれるICUに1日でも長く入院したいと考える被害者家族もいますが、ICUのベッドは、救命救急のための病床なので、いつ急患が搬送されても良いように、回復した患者は速やかに一般病棟に移るのが鉄則です。
しかし、遷延性意識障害は、脳の重度障害なので、速やかな回復は望めません。
自力呼吸はあるものの、食事は自分でできず会話による意思疎通もできない状態が続きます。
命が助かったという安堵の次に来るのが、この状態がいつになれば回復するのだろうという懸念です。
一方、健康保険は、3カ月以上入院する遷延性意識障害患者に対して極めて厳しい制度を採用しています。
病院に支払われる健康保険の報酬(点数)は、治療、入院して3カ月が経過すると急激に減ります。
病院は、健康保険の報酬によって病院の運営を維持しているので、経営効率の悪化を避けるには、遷延性意識障害患者を3カ月以上入院させないようにしたいと考えます。
遷延性意識障害患者の家族は、入院して2カ月が過ぎる頃には、病院から促され、転院について考えざるを得なくなるのです。
家族が遷延性意識障害となった場合には交通事故の示談交渉だけでなくそういった転院問題も抱えることとなりますので、まずは弁護士へ相談をおすすめいたします。
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3カ月以上入院している患者に対して健康保険が病院に支払う保険点数は激減するので、遷延性意識障害の患者は、入院から2カ月以上経つと、病院側から転院を促される。
交通事故で遷延性意識障害となっても、個室の利用料を加害者側に支払わせるのは難しいと言える。
遷延性意識障害になると、やがて施設療養を続けるか、自宅療養するかを選択することになるが、保険会社の意見をうのみにせずに熟慮の上で選択しなくてはならない。
遷延性意識障害の場合、点滴などのほかに経管栄養や尿道カテーテルなど、チューブを用いた医療行為がある。
交通事故の被害者になり、遷延性意識障害となってしまった場合、将来的な転院のための移動費用、さらには介護費用等も視野にいれるべきである。今後を見据えて、適切な慰謝料の請求を行うのが望ましい。