遷延性意識障害患者へ職業介護人が介護できることは?
遷延性意識障害の患者を自宅介護する場合、家族だけで介護するのは難しいと言えます。
そのため、介護の一部や場合によっては介護のほとんどを職業介護人に依頼することがあります。
遷延性意識障害患者の家族が、年齢的に健康状態が問題なく、介護のために常時在宅できるような状態であれば、職業介護人と連携して患者のケアをすることができます。
しかし、家族が高齢で遷延性意識障害患者の介護が十分にできなくなったり、病気で介護が出来なくなった場合、今まで自分でしてきた介護を職業介護人にお願いしたいという状況になる可能性もあります。
ですが、患者本人や患者家族が出来ても、職業介護人は法的にNGという行為がいくつかあります。
中には、「え?こんな簡単な事でも、してもらってはダメなの?」というものもあり、知識のない遷延性意識障害の家族からすれば、「こんな簡単なこともしてくれないなんて、なんて薄情な介護人なんだろう」と、誤解を生じかねないこともあります。
以前は爪切りや耳かきもNG
2005年に厚生省から介護の範囲に対しての通達が出るまでは、以下の範囲は介護人がすることはできませんでした。
1.体温計を使っての体温測定
2.電子血圧計による血圧の測定
3.入院治療の必要がない者への、指先を挟んで行う器具を使っての血中酸素飽和度の測定
4.軽微な切り傷やすり傷、やけど等で、専門的な判断や技術を必要としない処置やガーゼ交換
5.軟膏の塗布(床ずれなどの褥瘡の処置を除く)
6.湿布の貼付
7.目薬の点眼
8.一包にまとめられた内服薬の内服介助
9.坐薬の挿入
10.鼻に対する薬の鼻腔内への噴射介助
11.爪切り・爪やすり(爪や爪周りに怪我がなく、病気により安易な爪切りを禁止している場合を除く)
12.耳垢の除去
13.歯ブラシなどによる歯磨き、口腔内清掃
14.人工肛門のパウチ内にある排泄物の廃棄及びパウチの装着
15.自己導尿の補助としてのカテーテルの準備、体位の保持
16.使い捨て浣腸器を用いた浣腸
これらは現在職業介護人でも行うことはできますが、医師の許可や家族からの事前の同意が必要となるものもあるため、事前に確認が必要です。
さらに2012年には、
1.吸たん機による除痰作業
2.胃ろうや経管による栄養摂取
の2種類も、指定研修および実地研修を受けた介護人でも出来るようになりました。
しかし、「それぞれシートに入った薬を、各指定個数出して内服させる」、「インスリン等の注射をする」「血糖値を測定する(針を使うのでNG)」「褥瘡の消毒や軟膏を塗布する」などは医療行為とみなされ、職業介護人が行うことができません。
遷延性意識障害患者に対して職業介護人が出来るケアと出来ないケアを正しく知り、職業介護人の方と上手に連携していくようにしましょう。
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