遷延性意識障害によって起こる相続問題について
遷延性意識障害の患者が関係する相続では、多くの場合で難しい相続問題をはらむことがあります。
遷延性意識障害の患者であっても相続権があるため、相続人になることもあれば、反対に死亡して被相続人となる可能性もあります。
しかし、遷延性意識障害の患者自身は意思表示ができないため、相続を放棄することも、遺言書を書くことも出来ません。
ですので、残りの相続人同士で紛争が起こったり、1人の相続人だけが相続したりと不利益が起こることがあります。
例えば、患者自身の親が亡くなり、患者と弟の2人が相続人であった場合、本当ならば2分の1ずつ受け取ることになりますが、弟が悪意を持って患者の妻に知らせなかったり、「嫁なんだから、口を出すな」と相続から排除したりすることがあります。
本当は、患者の妻が被成年後見人であれば、患者の代わりに相続にかかわることができるのですが、気の弱い方ならばそのまま相続分を受け取らずに済ましてしまう危険性があります。
患者が死亡時には弁護士に依頼する方が無難
反対に患者が亡くなった場合にも、相続問題が発生するケースがあります。
交通事故の遷延性意識障害の損害賠償金は高額となるため、患者名義で損害賠償金を受け取ってから早逝してしまうと、多額の相続が発生することになります。
相続税関係はひとまず置いておいても、相続人が複数ある場合は相続問題が起こりがちです。
特に、相続人の1人が患者の介護を日常的に行っており、他の相続人が介護にはまったくかかわらなかったようなケースです。
介護を行っていた相続人は取り分を多く求めるでしょうし、他の相続人は法定相続分を請求して、泥沼の相続問題となることがあります。
反対に、介護していた家族が患者の資産を食いつぶしていて、相続時に横領が発覚して他の相続人に糾弾されるということもあります。
また、患者が遷延性意識障害になる前に遺言書を書いている場合も、問題となることがあります。
仮に、患者が元気であった時に、同居している長男に貯金の100万円をすべて相続させる遺言書を書いていたとします。
遺言書が書かれた時点では、次男も「長男が父の面倒を見ているし、100万円くらいならいいか」と思っていたとしても、遷延性意識障害となり遺産が5000万円にまで増えたら話が変わってくることもあります。
そうなると、次男の方は遺言書の無効と法定割合での相続を、裁判所に訴えるかもしれません。
反対に長男が遺言書を盾に次男に徹底抗戦した場合、相続問題が長期化することになります。
こういったことを防ぐ意味でも、早い段階で弁護士に相続問題について相談をしておく方が良いかもしれません。
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遷延性意識障害患者の財産や契約の管理には成年後見人が必要である。4親等内の親族が裁判所に申立書類を提出し、審判を経て成年後見人になることができる。
交通事故で遷延性意識障害となった場合、証言が出来ないため相手方に有利な証言で事故の処理をされてしまうので、早い段階で弁護士に依頼をして証拠固めをした方が良い。
家族が交通事故に遭い遷延性意識障害患者となった場合、患者家族が交通事故の加害者に対して家族への慰謝料を請求することは難しいので、事前に弁護士に相談をするとよい。
交通事故の加害者側に、遷延性意識障害患者の自宅介護の費用を請求するには、患者家族がクリアしなければいけないハードルがいくつかある。
遷延性意識障害となった患者に親類がいない場合は、市区町村の首長が弁護士などを後見人として指名して、家庭裁判所に成年後見制度の申請をすることになる。