遷延性意識障害と成年後見制度について
交通事故等で遷延性意識障害となられた場合、様々な手続きが必要となりますが、そのなかでも重要なものが成年後見制度です。
成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分もしくは出来ない場合に、その人の財産や預貯金を管理し、保護する制度です。
近年、高齢化と核家族化に伴い認知症を患った高齢者が一人住まいすることが多く、そういった方に対して悪徳商法ともいえる高額のリフォーム契約や不動産契約、物品販売などが行われ、社会的にも大きな問題となりました。
そこで、成年後見制度でこういった人たちを保護し、後見人となった人が財産や預貯金などを管理し、管理している預貯金から治療代を支払ったり、身の回りの世話をしたりします。
成年被後見人となった人が行った売買契約などは無効とされ、成年後見人もしくは家庭裁判所の許可がなければ、預貯金の引き出しや不動産の売買などが出来なくなります。
成年後見の申請
成年後見の申請は、家庭裁判所に対して行い、判決と言う形で承認もしくは却下されます。
成年後見人は、成年被後見人の本人、配偶者、四親等内の親族、弁護士などがなる事ができ、「本人の意思確認が不十分」との医師の診断書が必要となり、指定された書類に記入して提出します。
成年後見の判決が出るまでには、書類提出をしてから2カ月から半年くらいかかります。
成年後見のための医師の診断書の発行費用が5~10万円と、時間も費用も掛かり、申請する書類も膨大となりますが、他人の財産を自由に使うことができると言う立場を悪用されないとも限らないため、裁判所も慎重を期しているからとの側面があります。
ですが、遷延性意識障害の患者の場合、意識が不十分であることは明らかなので、通常の医師の診断書で済む事例もあり、配偶者や子など患者と血縁が極めて近しい場合には、1カ月以内に判決がおりることもあります。
遷延性意識障害患者と成年後見制度
遷延性意識障害では本人の意思確認が十分に取れないため、成年後見制度で配偶者や子、兄弟などが後見人となる必要があります。
特に交通事故により遷延性意識障害になった場合、損害保険会社との補償金交渉は後見人でなければ出来ないとしている損保会社も多く、支払われる補償金も交通事故に遭われた方の名義となるため、患者のための入院費や治療費であっても勝手に他人が預貯金を引き出すことは出来ず、後見人のみが管理運用することができます。
その代り、後見人となった人は、被後見人の財産をどのように使ったかなどの報告を1年に1度、家庭裁判所に提出しなければいけません。
その報告で家庭裁判所が、「後見人の行為が不適格」と認めると後見人を取り消され、別の後見人が選定されることになります。
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交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償額を計算するので争点になりがちである。
最低限の賠償を補償するのが自賠責保険、不足分を補填するのが任意保険である。示談成立に時間がかかる遷延性意識障害では、被害者請求を利用しながら両保険金の受取法を選択すると良い。
遷延性意識障害における逸失利益を算出するにあたって、被害者の余命年数や生活費が問題として取り上げられやすい。場合によっては生活費が控除されるなど、賠償金が安くなる可能性がある。
遷延性意識障害患者は、症状固定をすると和解や判決で賠償金が決定するまで立て替え払いが増えるので、症状固定の時期を慎重に決めなくてはならない。
交通事故における示談交渉には時効が存在する。遷延性意識障害を負った場合も例外ではなく、しっかりと期間について意識しておく事が、損害賠償を請求する際には重要である。