移動関連の問題が起こりやすい脊髄損傷患者の後遺症について
交通事故で脊髄損傷を負った場合、多くの人が足に障害が現れます。
これは脊髄は上から順に神経が分岐して体の各部分とつながっているため、脊髄損傷を負った部分より下の身体の神経障害が出るからです。
つまり、腰より下の脊髄を損傷した場合、膝から下に麻痺やしびれが生じることが多いのですが、胸のあたりの脊髄を損傷した場合、胸から下全体の麻痺が生じるので、部分別に見た『足の麻痺』が起こっている脊髄損傷患者の割合はかなり多くなります。
そのため、脊髄損傷患者の後遺症に関する問題では、移動に関するものが多く上がります。
足に重度の麻痺がある患者に関しては、車いすでの移動が余儀なくされますが、交通事故前は自分で歩行できていたため、はじめはそのギャップを受け入れられない方もいます。
車いすで移動する際にも、上半身に麻痺が無く車いすの操作が自力で出来る場合はまだよいのですが、腕にも麻痺がある場合には自力走行は難しく、電動車いすが必要になるのですが、通常の車いすよりも重量が充電池やモーターなどで重くなるため、移動範囲がさらに狭まる可能性もあります。
自力歩行が可能な麻痺であっても、杖がなければ歩行できない脊髄損傷患者も多いです。
杖なしで歩行可能なケースでも、『走ることは出来ない』、『バランスを崩しやすいのでゆっくりとしか歩けない』、『つま先が上がらないため、小さな段差でもつまづいてしまう』といった、一見して健常者と見分けがつきづらく、周りから障害を理解してもらいづらいといった問題が起こる事があります。
示談をする際には歩行・移動を補助するものまで考える
交通事故の示談をする際には症状固定をしてからになるので、日常の移動に対する不便利さをある程度経験されてからになるため、車いすや杖の購入費用を相手方に請求することも多くありますが、将来的な費用の請求を忘れるといった問題があります。
車いすの耐用年数は6年、杖の耐用年数は4年ですので、仮に脊髄損傷患者の平均余命が24年あるのでしたら、車いすは4回、杖ならば6回買い替えを行わなければいけません。
この将来的な買い替え費用も請求することができます。
近年ではバリアフリーが謳われ、公共交通機関のバリアフリー化が進んでいますが、車いすの使用者の目線からすると、『エレベーターがあるのは、改札口とは真逆の方向』、『スロープの角度が急すぎて、自力で上がれない』、『電車の乗り降りは駅員に頼まなければいけないので、気を使って外出頻度が減った』という様な意見が聞かれます。
また、都市部から離れた地域であると公共交通機関のバリアフリーの整備が不完全、もしくは全く無かったり、公共交通機関が日に数本のバスや電車のみという問題もありえます。
その場合、タクシーか自家用車での移動が中心となりますが、利便性から自家用車での移動を希望されることが多くあります。
しかし、車いすから自動車への座席への移動が負担と感じる方も少なくなく、車いすごと乗車できるタイプの自動車や、下半身に麻痺があっても運転が出来る障害者用の自動車を購入する方もいます。
自動車の購入費用も必要と認められれば、相手方に請求することができますので、示談をする前に弁護士に相談をして、将来を見据えた示談を行うとよいでしょう。
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交通事故における示談交渉での請求の権利は、交通事故が発生してから3年と決まっている。しかし、脊髄損傷のような重篤な後遺症がある場合、時効を算出する開始日が異なり、症状固定から3年間である。
脊髄損傷の入院期間は、国が定めた規則により例外と認められない限り6カ月を超えると入院基本料の15%が自己負担になるため、ほとんどの人が6カ月以内に退院する。
脳の底部から背骨へと延びている太さ約1cmの神経である脊髄を交通事故などの外部からの衝撃で傷付け、さまざまな病状を発症するのが脊髄損傷である。
脊髄損傷と一口にいっても、必ず上位の後遺障害等級に当てはまるとは限らない。当該症状に応じ、認定される等級は異なり、等級が高いほど慰謝料の額にも関わる。
交通事故に遭い脊髄損傷を負って後遺障害が残った場合には、逸失利益が発生するが、被害者の職種などによっては、実情の損害とそぐわない逸失利益の額となることがある。