任意一括請求とはどういったものなのですか?
【質問】
先日、自動車同士が衝突する自動車事故を起こし、入院しました。
加入をしている自動車保険の担当者が来て、補償内容についていろいろと説明してくれたのですが、「任意一括請求でいいですか?」と聞かれ、良くわからないまま了承しました。
今更なのですが、任意一括請求とはいったいどういったものなのでしょうか?
また、保険会社に任意一括請求を任せたことで、デメリットはないのでしょうか?
【回答】
自動車に関する保険は、自賠責保険と任意の損保会社の自動車保険の二階建てとなっています。
まずは強制加入の自賠責保険から保険金が支払われ、それで不足する分を任意の保険会社から支払われることになります。
自賠責保険の傷害に対する補償は、120万円が限度となります。
治療費や休業補償、慰謝料などをすべて含めて120万円なので、ちょっとした入院が絡む交通事故であれば、あっという間に限度枠に達してしまいます。
限度枠に達した後の補償は任意加入の保険会社から支払われることになるのですが、自賠責保険と損保会社の二社に対して別々に請求するのは手間がかかるため、損保会社が窓口となって自賠責保険の手続きを一括して行うことがあり、これを「任意一括請求」と言います。
損保会社によっては、「任意一括サービス」「自賠責一括対応」など名称が違う場合もあります。
任意一括請求をすると、被害者側は損保会社が作成した書類に目を通して、署名・押印するだけでよいため、手間が減ると言うメリットがあります。
また、自賠責分の保険金も損保会社から一括で振り込まれるため、この点に関してはメリットでもありデメリットでもあると言えます。
任意一括請求のデメリットは、被害者自身が自賠責保険に請求した時よりも保険金の入金が遅れることです。
自賠責保険は、示談が済んでいなくても被害者請求で書類などに不備がなかった場合には、1週間~1カ月ほどで支払われますが、任意一括請求としている場合には損保会社と示談が済んでからでないと支払われません。
また、後遺障害認定の時に不利となる可能性があります。
交通事故の後遺症が残った場合には、傷害補償とは別に「後遺障害に対する補償」が自賠責保険より支払われます。
後遺障害には1~14級の等級があり、等級により支払われる金額が変わります。
自賠責の後遺障害の等級と損保会社の後遺障害等級は等しくなるため、損保会社としては障害等級が軽くなる方が保険金の支払いが少なくて済むため、自賠責への申請に消極的になります。
後遺症が残るような交通事故であるのならば、任意一括請求をせずに自分で後遺障害認定や自賠責保険への請求を行った方が、障害等級が上がる可能性が高くなり、ひいては保険金がアップすることになります。
任意一括にはメリットデメリット双方あるので、どちらの方が良いかよく考えてから依頼するようにした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
主婦が交通事故にあった場合、休業補償はされないのでしょうか?
専業主婦が交通事故で入院や通院をしたりする場合は休業補償の適用となるが、保険会社から詳しく説明されることは皆無なので、弁護士に依頼して保険金の請求をした方が良い。
交通事故で労災が使える場合には、自動車保険だけで補償してもらうよりも、労災と併せて補償してもらう方が、手厚く補償してもらえる。
交通事故を直接の理由として企業が従業員を解雇することはできない。交通事故が原因の休業による解雇で休業補償を請求するには、交通事故と解雇との因果関係の証明が必要だが、証明書類の用意は困難である。
加害者が加入している自動車保険の損保会社に葬儀費用の請求をしたり、自賠責保険の仮渡金を利用したりすれば、葬儀費用を用意することができる。
交通事故の示談を加害者と直接した場合には、保険会社から保険金が支払われなくなるため、直接の示談はしない方がいい。