交通事故の加害者に支払い能力がない場合はどうすれば良い?
【質問】
1年前、学校から自転車で帰宅途中だった弟がひき逃げ事故に遭い、亡くなってしまいました。
3ヶ月ほどでひき逃げの犯人が捕まり、刑事処分を受けさせることができましたが、賠償問題が解決されずに悔しい思いをしています。
加害者は自賠責保険に加入していたので、自賠責部分に関しては死亡事故の補償を受けたものの、任意保険に加入していなかったために、自賠責保険を超える損害額を加害者に直接請求しています。
しかし、相手から一向に支払いも連絡もないので確認したところ、日雇い労働者で収入が少なく、支払い能力がないということが分かりました。
それならば加害者の家族に未払い分を請求したいと考えましたが、これまでこの交通事故の件で相談してきた弁護士の方から、それは出来ないと言われました。
本当なのでしょうか?
一般的な感覚で言えば、自分の家族が死亡事故を起こして支払い能力がないなら、家族も支払いの責任を負うべきと感じるのですが、そうは考えないのでしょうか。
支払い能力がある家族に代わりに支払ってもらう方法はないのか、なぜ家族は責任を負わないのか、納得できる理由を教えてください。
【回答】
民法により「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者が損害賠償責任を負う」と定められており、加害者の家族は「他人の利益を侵害した者」とは言えないため、いくら加害者自身に支払い能力がなく、その家族であれば支払いが可能だとしても、家族に責任を負わせる法的根拠はないのです。
ただし、あくまで支払い義務がないというだけで、加害者家族自ら「賠償の不足分を支払います」と申し出る分には問題ありません。
また、家族が法的責任を負うケースが全くないわけではなく、もしも家族が運行供用者である場合には、運行供用者責任に基づいて損害賠償責任が生じます。
つまり、交通事故当時に家族の車を加害者が借りていた場合や、加害車両の所有者が家族だった場合です。
また、家族が加害者を雇用している場合で、勤務中にひき逃げを起こしたのであれば、雇用主である家族に運行供用者責任が生じ、交通事故の損害を請求可能です。
さらに、加害者が責任無能力者であった場合に、監督義務者である家族に請求できる可能性が存在します。
加害者とその家族について交通事故当時の事実関係を確認し、上記のケースに当たらないか確認してみる必要はありますが、法律的に、加害者家族に損害を支払ってもらうのがかなり難しいのは事実です。
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交通事故における過失割合は、被害者が請求する賠償金に大きく影響する。相手の保険会社が決定した過失割合に納得いかない場合、根拠のある反論が求められる。
交通事故に遭い、加害者の車が自賠責保険未加入で任意保険もない場合、同居する家族の保険で賠償できることがある。次の手段として本人に直接請求し、これが無理なら国による保障を利用する。
仮に交通事故の示談交渉を弁護士に任せたとしても、保険会社と交渉する場に、被害者が同席する事は可能である。しかし、その場合にはスムーズに事を進めるために入念な打ち合わせが求められる。
通勤中の交通事故では自賠責のほか労災にも保険金を請求できることがある。状況によるが、一般的には労災へ先に申請して、差額を自賠責へ請求することが多い。
保険会社は約款に従って賠償金を支払うため、個人で裁判所基準の賠償金を要求しても応えてもらえない。交通事故の示談段階でも、裁判を起こすにしても、賠償金額を増やすには弁護士へ依頼すると良い。