生活保護者の死亡事故の場合、逸失利益はもらえませんか?
【質問】
夫は3年前に病気で働けなくなり、生活保護をうけていました。
4カ月前に、その夫が歩行中に交通事故に巻き込まれ、即死しました。
しかし死亡事故に遭った時は、徐々にですが病気が回復していき、医者からもあと3カ月ほど様子を見て体力が伴えば、仕事ができるだろうと言われ、夫も再就職に向けてはりきっていた矢先であったため、無念でなりません。
加害者側の保険会社から示談の打診があったのですが、驚いたことに将来的な収入に対する補償である逸失利益が0円でした。
夫の過失は0であったため、保険会社には抗議したのですが、「死亡事故当時は無職で生活保護の受給者であったため、逸失利益は支払えない」との一点張りで、話し合いにすらなりません。
生活保護受給者の死亡事故の場合には、逸失利益は支払ってもらえないのでしょうか?
【回答】
死亡事故の逸失利益とは、「死亡事故に遭わなければ得られたであろう利益」のことを指しますので、会社員であれば給与、自営業者であれば事業による利益に相当します。
会社員ならば死亡事故当時に会社から支給されていた給料、自営業者であれば納税証明や帳簿からそれらを算出することができますが、無職の場合はそれがありませんので、逸失利益が認められないのが通常です。
しかし、一口に無職と言っても「再就職活動中」の方もいれば、「転職で次の会社に内定しているが、入社日が1カ月先である」、「親の遺産があり、働かなくても暮らしている」など、質問者のように「生活保護を受けて病気療養中であるが、病気が快癒すれば復職予定」のものまで幅広くいます。
そういった人たちを、「無職」と十把一絡げにしてしまうのは、保険会社の乱暴な論法で、判例では無職であっても逸失利益を認めるケースもあります。
「再就職活動中」や「転職で次の会社に内定しているが、入社日が1カ月先である」といったケースでは、死亡事故がなければ就職していた可能性が高いため、性別や年齢による賃金センサスに基づいて逸失利益を支払うように命じた判決もあります。
今回のケースでは、「病気療養中であるが、病気が快癒すれば復職予定」がどの程度現実的であったかが問題になります。
医師の診断から、「死亡事故に遭わなければ、3カ月後から就職活動をして復職していた可能性が高い」とされた場合には、逸失利益が認められる可能性もあります。
裁判でも意見が分かれる事案と考えられますので、事前に交通事故に詳しい弁護士に相談をしてみる方が良いと思われます。
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加害者の持病が原因で起こった交通事故の場合でも、加害者に責任能力を問うことができる可能性が非常に高く、損害賠償請求もできる可能性が高い。
交通事故の怪我が原因で入院した場合、被害者は個室を希望される場合が多い。しかし過去の判例からすると、そのほとんどは個室料金の請求が認められていない。
交通事故の症状固定後に死亡した場合の逸失利益の計算は、特別な理由がない限り症状固定時の平均余命により算出される。
交通事故に遭い受験ができなかった場合には、交通事故の被害者の学力によっては、1年分の年収に当たる損害賠償金を請求することができる。
交通事故で入院した場合、医師から治療の必要性により指示があるなどでないと、個室利用料を加害者に対して請求することはできない。