交通事故で受験できなかった場合の損害賠償は?
【質問】
高校3年生の息子がセンター試験の当日に交通事故に遭い、そのまま入院したため、国公立大学の受験は絶望的になりました。
滑り止めの私学の試験日も入院中であったため、結局息子は1年の浪人を余儀なくされてしまいました。
息子は受験直前の模擬試験では希望大学のA判定をもらっていただけに、落ち込みようは見ていられない状態です。
経済的な面からも、1年分を浪人生として過ごすため、無駄な金銭が必要となっています。
交通事故の加害者に、大学受験が出来なかった分の損害賠償請求をすることができるのでしょうか?
もし、損害賠償請求ができるのであれば、どの程度の請求額になるのでしょうか?
【回答】
交通事故により損害が生じた場合には、それを被害者が証明する必要があります。
今回のケースでは、「交通事故がなければ大学受験を受けて合格をし、大学に入学していた」という証明が必要になります。
学力に関しては直前の模擬試験でA判定であったということですが、裁判となった場合は成績の推移も鑑みることもあり、以前の成績の状況によっては裁判所が学力不足と認定する可能性もあります。
裁判所が学力不足であったと認めた場合には、損害賠償請求をすることはできません。
もし、裁判所が「学力に問題はなく、大学に合格していた可能性が高い」と認めた場合は、損害賠償請求の対象となります。
その場合の損害賠償金額は、賃金センサスの基準による収入の1年分となります。
ちなみに、平成27年度の19歳以下の賃金センサスでは、男性で年収248.34万円、女性で年収220.41万円です。
もう一つの別のケースで、受験日以前に交通事故に遭い勉強不足となり、受験は出来たが不合格となったというものは、裁判所の認定が厳しくなる傾向があります。
というのも、高校に入学してから継続的に好成績をキープしていた場合には、裁判所も合格の可能性が高いとの認定を下すことができますが、それ以外の場合は未知数であると言えるからです。
高校3年になってからや、3年の夏休みから本格的な受験勉強をするスロースタータータイプであると、いくら成績が急上昇していても受験までに合格の基準まで届いていたか、交通事故の時点が天井であったのか、裁判所では判断がつかないというのが正直なところだと言えます。
「受験勉強期間に交通事故に遭い、本命は不合格だったが同程度の滑り止め大学には合格し、最終的には浪人を選択した」という訴訟では、損害賠償請求を認めなかった判例もあるため、留意しておいた方が良いでしょう。
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加害者の持病が原因で起こった交通事故の場合でも、加害者に責任能力を問うことができる可能性が非常に高く、損害賠償請求もできる可能性が高い。
交通事故の示談交渉は当事者同士が行うか、代理権を有する保険会社か、依頼を受けた弁護士しかすることができないため、たとえ家族であっても示談交渉を任せることはお勧めできない。
交通事故の症状固定後に死亡した場合の逸失利益の計算は、特別な理由がない限り症状固定時の平均余命により算出される。
交通事故の後に被害者の過失により怪我が悪化した場合、交通事故の時点での損害以外は加害者と言えども補償する必要はない。
交通事故の被害者からの過剰な要求は、加害者と言えども要求に応じる必要はないため、保険会社が介入しているのならば、保険会社に対応してもらうと良い。