交通事故によるむち打ちで後遺障害認定は受けられますか?
「交通事故でむち打ちになったのですが、保険会社から治療費の支払いを打ち切られました。治療費の支払いと、痛みがまだあるので後遺症として慰謝料の請求を保険会社に出来ますか?」という相談が寄せられることがあります。
まず、むち打ちの治療を受けている段階では後遺障害(後遺症)とは言えません。
後遺障害とは、『治療をこれ以上しても良くも悪くもならないので治療を辞めて、今ある症状(痛みや麻痺など)は後遺障害とします』ということです。
つまり、治療中の場合には完治もしくは軽減する可能性があるため、後遺障害とは認められません。
後遺障害を確定するには、自賠責保険による後遺障害認定が必要となります。
書類と医師の診断書を提出して、損害保険料率算出機構が後遺障害の判定をし、自賠責保険に通知をして、後遺障害に当たるのであれば後遺障害慰謝料の支払いを、後遺障害に当たらないのであれば不払いの処理をされます。
つまり、先述の質問には「治療費に関しては、必要な治療費であれば請求できます。後遺障害慰謝料については、後遺障害認定を受けてから請求ができます。」ということになります。
実際のむち打ちでの後遺障害認定の割合は?
では、むち打ちで後遺障害認定が受けられる確率はどの程度なのでしょうか?
損害保険料率算出機構や自賠責保険では、後遺障害認定の個別の事案や審査数の統計は発表していないため、正確にはわかりません。
損害保険料率算出機構の2020年度の「自動車保険の概況」と見ると、後遺障害と認定された総件数は52,541件です。
むち打ち単体で認定される可能性がある第12級と第14級の件数は、第12級が8,556件(全体の16.28%)、第14級が30,675件(全体の58.38%)です。
受傷度別傷病数構成比をみる一番軽度である傷害度1が83.5%です。
交通事故の総数が381,237件で、傷害度1以外は16.5%で約62,900件の事故で中度以上の怪我を負っていることになります。
(実際には1事故で2人以上の死傷者があったり、1名の傷害者が複数の傷害度を保有している場合・傷害度が不明の場合などもあり、認定も交通事故から年月がずれてされる場合もあり、前後があります。)
単純計算で、後遺障害認定を受けられるのは、総交通事故数の13.7%になります。
むち打ち自体は、傷害度1の軽症に区分されます。
傷害度2以上の傷害の件数が62,900件で、後遺障害認定数は52,541件ですので、後遺障害認定された傷害度数は2以上がほとんどであることは想像に難くありません。
つまり、傷害度1のむち打ちで後遺障害認定を受けるのは、割合的には低いと言えます。
とはいえ、むち打ちで後遺障害認定が認められたケースもあるので、交通事故に詳しい弁護士に相談の上、後遺障害認定の手続きを進める方が良いでしょう。
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交通事故による死亡者は減っているが、怪我人はそれほど減っておらず、交通事故で怪我をした人の6割はむち打ちになっている。保険会社にむち打ちを否定された場合には、弁護士へ相談するのが望ましい。
交通事故によるむち打ちの治療で整体院に通院していた場合、医師による診断書を発行してもらえず、後遺障害認定がされないことがあり、その状態になると弁護士が介入しても覆すことが難しくなる。
むち打ちになる原因の第1位は交通事故である。交通事故の衝撃で一瞬にして頸椎、椎間板、関節包、頸部の筋肉などを損傷してしまう恐れのある重い傷害である。
むち打ちの後遺障害認定が非該当とされた場合には、異議申し立てをして再審査してもらうことができるが、認定されるのは非常に難しい。
むち打ちとなって治療を受けても症状が良くならないことが明らかになったら、後遺障害診断書を書いてもらえば、むち打ちによる後遺障害等級認定の申請ができる。