むち打ちで保険会社から治療費を打ち切られる理由とは
交通事故によるむち打ちで、被害者と保険会社でよく問題になるのが、治療費の支払いの打ち切りの問題です。被害者側からすれば、「交通事故で負ったむち打ちが完治していないのに、治療費の支払いの打ち切りはヒドイ」と、感じると思います。
保険会社の考え方としては、交通事故によるむち打ちならば、3カ月を治療の目安としています。
実際に統計によると、2週間までに完治するむち打ちが6割以上で、1カ月で8割以上の完治率ですので、それ以上症状が続くむち打ちは少数派です。
むち打ちの多くは首の筋肉の捻挫が大半の原因であるため、レントゲンやCTなどでは判断がほぼ不可能であり、患者からの首の痛みや違和感の自己申告頼りのところがありますので、保険会社としても厳しく見ざるを得ない事情もあります。
そのため、保険会社からの言い分としては、「治療期間が3カ月あれば、通常のむち打ちならばとっくに完治している。骨折など他のことが原因ならば、検査の時に見つかっているはずなので、病名はむち打ちではなく骨折などで診断されるはず」ということになります。
通院回数以外にも治療内容でも打ち切りの危険性が
むち打ちの場合、通院による治療が主となるため、「週2回、最低でも1回は通院」というのが、交通事故の被害者へのアドバイスでよく見られます。
判例でも通院期間が2週間以上あくなど、通院の間隔があきすぎた場合には、「長期間、病院に行かなくても日常生活が送れているのならば、交通事故による受傷は治っている」とみなされてしまうため、正しいと言えます。
しかし、週2回通院していても、場合によっては3カ月を待たずして打ち切りといったこともあります。
その1つ目の理由は、交通事故自体が軽微な接触事故で、重度のむち打ち症状が出るとは考えにくい場合です。
お互いが20㎞/hくらいのスピードでの自動車同士の接触などでは、重傷なむち打ちの症状が出ることが少なく、1カ月で治療費の打ち切りを言ってくるケースもあります。
2つ目の理由は、病院での治療内容があまり良くない場合です。
治療しているのに長期間よくならないむち打ちであれば、再検査をしたり、治療法を変えたりと、医師のほうでも治療方法の変更や改善があってもいいはずです。
しかし、通院で病院に行っても医師が漫然と湿布薬と鎮痛剤だけを出しているだけでしたら、保険会社からすれば「治っているのに、患者が保険金目的だけで通っているのではないか?」「病院が治療費欲しさに患者を通院させているのでは?」と疑念を抱くことがあります。
特に、接骨院などにしか通っていない場合には、「マッサージ治療を受けられるのであれば、むち打ちの場所を触っても痛みがない(耐えられるほどの痛みしかない)」と判断されて、治療費の打ち切りの対象となるケースもあります。
リハビリ中心となりがちなむち打ちの治療ですが、医師のむち打ちの継続的な所見がもらえるように、適度な検査結果が必要と言えます。
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医学的な画像診断が得られないむち打ちの場合、神経学的検査が行われることもあるが、絶対的な検査方法ではない。
むち打ちで接骨院に通院する場合には、手順をしっかりしてなければ保険会社から治療費が支払われない可能性があるので、事前に弁護士に相談するのも良い。
保険会社はむち打ちの治療費の打ち切りを早期に言うことがあるが、医師から通院の勧めがある場合には通院を続けた方が良い。不当な打ち切りであれば弁護士から抗議してもらう方法もある。
自賠責保険の怪我の治療費などの支払い上限は120万円であるため、むち打ちの治療費などが120万円を超えると、保険会社は治療費の打ち切りを言ってくることが多い。
むち打ちによって発生する損害は治療費だけではないので、治療が終わったら加害者の支払いは終わりではなく、その他の損害賠償金について話し合うべきである。