死亡事故の過失割合と自賠責保険の支払いについて
死亡事故の場合、保険会社から支払われる損害賠償金、いわゆる示談金が高額になる傾向があります。
自身の過失割合が10ならば相手方に損害賠償金を請求することは出来ませんが、過失割合が9であったのならば過失分を引いた10%を相手方に請求できます。
また、自賠責保険は被害者救済の観点から、過失割合に準じた独自の割合で保険金を支払っています。
死亡事故の場合、過失割合が70%未満ならば全額(減額なし)、70%以上80%未満で20%減額、80%以上90%未満で30%減額、90%以上100%未満で50%減額になります。
つまり、1%でも相手方に過失割合があるのならば、99%過失がある交通事故による死亡者でも、自賠責保険の50%の範囲内で保険金が支払われます。
そのため、「任意の自動車保険に加入していないし、過失割合が自分の夫にもある死亡事故だし、保険金は支払われないかも…。」と思っていたら、自賠責保険の上限の3000万円が支払われたというケースもあります。
過失割合を決めるのは慎重に
自賠責保険の過失割合による支払いは変則であるのですが、基本的には過失割合に準じます。
例えば、過失割合が5:5の死亡事故で、逸失利益や死亡慰謝料の総額が5000万円になったとします。
通常ならば、過失割合が5あるので50%減額の2500万円を相手に請求することができます。
しかし、自賠責保険では満額支払われることになるので、3000万円が支払われます。
ここでポイントとなるのが、逸失利益や死亡慰謝料といった人身にかかる損害賠償分のみ自賠責保険から支払われることです。
つまり、『全損になった自動車の代金』や『自動車に乗せていたゴルフクラブ一式』といった物損部分は自賠責保険の対象外のため、相手方に過失割合を引いた分を請求します。
もうひとつ気を付けなければいけないのが、死亡事故の相手方もしくは相手方の遺族もこちら側に請求できる点です。
「こちらの方が過失割合も少ないし、歩行者だから死亡事故の保険金がもらえるだろう。」と思っていたら、もらえるどころか持ち出しというケースもありえます。
例えば、過失割合が3:7の歩行者と自動車の死亡事故で、歩行者が年金生活の高齢者であったため遺族に、逸失利益などの全額の2500万円が自賠責保険から支払われたとします。
しかし、自動車側が30代の会社社長で逸失利益などが3億円で、3割でも9000万円を相手方に支払わなければならず、1000万円の自動車が全損なので300万円の物損分をも支払わなければいけないとしたらどうでしょう?
9300万円を相手方に支払わなければならないのですが、歩行者が自動車保険の人身傷害特約などに加入していなければ、自賠責保険の2500万円と歩行者の遺産で支払わなければならず、足りなければ遺族が支払わなければなりません。
遺族が支払うのが無理であれば、相続放棄も考えなければいけません。
30代で会社社長は極端な例かもしれませんが、30代・40代の会社員でも逸失利益等が1億円を超えることも珍しくないため、過失割合が少なくても状況によっては遺族の持ち出しもあるため注意が必要です。
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死亡事故による慰謝料は、本人に対する慰謝料と近親者慰謝料があるが、近親者慰謝料を積極的に請求することにより、遺族の悲しみを訴えて慰謝料が増額する可能性がある。
死亡事故で自動車保険と生命保険の両方の支給要件を満たす場合、両方から保険金を受け取ることができる。
死亡事故のように損害賠償額が大きくなったり、加害者との争点が生まれたりしそうな場合ほど、弁護士の力が求められる。その時、できる限り交通事故に強い弁護士を選ぶのが望ましい。
交通死亡事故でひき逃げや飲酒運転、証拠隠滅など加害者に悪質な事由がある場合、慰謝料が増額された判例がある。賠償金額が大きく違ってくる可能性があり、交通死亡事故に強い弁護士へ相談すべきである。
家族が死亡事故に遭った際に請求できる慰謝料は死亡慰謝料と呼ばれ、死亡した被害者本人に対する本人慰謝料と被害者の近親者に対する慰謝料といった内訳は2種類に分別される。