死亡事故被害者が無職の場合、逸失利益は請求できない?
死亡事故における損害賠償金の中で、大きな割合を占めることがあるのが『逸失利益』です。
逸失利益とは、『もらえなかった利益』、つまり『生きていればもらえたであろう給料』などを指します。
ざっくりとした一例では、年収500万円の45歳の男性が死亡事故で亡くなった場合、65歳が定年であればあと20年間働けたのですから、500万×20年=1億円が逸失利益になります。
(実際には様々な条件などがあり、変動することがあります。)
では、無職で収入が0円であった場合は、逸失利益は0円になるかというと、単純にはいきません。
例えば、無職の55歳の男性A・B・Cの3人が、死亡事故に遭ったとします。
逸失利益は、Aさんは0円、Bさんは4195万円、Cさんは9600万円になりました。
同じ無職の55歳男性であるにもかかわらず、これだけの差が出るのには理由はなんなのでしょうか?
将来的な就職が可能かどうかがポイント
この3人の逸失利益が変わったポイントは、将来的な就職がどうであったかによります。
Aさんは就業不可能な病気にかかっており、将来的にも就業は不可能であったため、逸失利益は0円になります。
では、BさんとCさんの差はどこにあるのかと言うと、就職が決まっていたかどうかです。
Bさんは就職活動中で、Cさんは死亡事故に遭わなければ1週間後から就職予定でした。
逸失利益を計算する際には、『賃金センサス』と呼ばれる厚生労働省発表の年齢・性別・学歴別の平均年収を使うのですが、55歳男性の賃金センサスは419.5万円であるため、『Bさんが就職したら平均額の419.5万円の年収があり、定年退職までの10年間働けた』との計算になるため、4195万円になります。
一方Cさんは、就職予定先の会社の年収が800万円で、定年退職は67歳と規定されていました。
ですので、Cさんは800万円×12年=9600万円が逸失利益になります。
つまり、『無職=逸失利益0円』ではなく、就職予定なども鑑みて計算されるもので、専業主婦や年金受給者も逸失利益が0円で計算されるのは間違いだと言えます。
しかしながら、保険会社は支払いを少しでも減らしたいがために、「無職なので逸失利益は0円」との主張を平気でしてきます。
『フリーターの息子が死亡事故に遭ったが、逸失利益が0円だった。』などと保険会社に言われた場合には、弁護士に相談をして逸失利益の計算をしてもらった方が良いです。
逸失利益が0円や低い場合には、その他の補償内容も低く算出しているのがほとんどですので、弁護士に示談金額と内容を精査してもらうほうが、弁護士費用を引いて考えても手取り金額が多くなることがほとんどですので、悩んでいるのならば無料相談などを利用してアドバイスを受けるとよいです。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
ご家族が死亡事故に遭われると、正常な判断ができなくなる可能性があります。抜けのないよう、損害賠償を全て請求するためにも、その種類についてはしっかりと把握しておく事が大切です。
死亡事故の被害者に既往症や持病がある場合には、保険会社が余命の減算をしてくることがあるが、判例では健常者と変わらない余命計算がされることがほとんどである。
賃貸オーナーの場合、収入は所有する不動産が生み出しているため、死亡事故で亡くなったとしても、逸失利益が認めてもらえないケースもある。
死亡事故当時無職であった場合には、逸失利益を0円として保険会社は計算をしてくるが、裁判所の判断によっては逸失利益を認める判決が出ることがある。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。