以前から歩行困難で脊髄損傷により歩行が出来なくなったら?
交通事故の場合、年齢を問わず被害者となる可能性がありますが、割合をみると高齢者が多く、次に子どもが多い傾向があります。
子どもは注意が一点に行きやすいため、『車道に転がったボールを取りに行く』といった周りの安全確認を怠るケースや、身体の小ささから運転手の死角に入って交通事故に巻き込まれるケースがあります。
一方、高齢者の場合には、『横断歩道を青信号の間に渡りきれない』といった身体能力の低下から事故に巻き込まれるケースや、認知症などで判断能力が鈍り『危険な車道を渡ろうとする』といったケースなどがあります。
高齢者が交通事故に遭い脊髄損傷で歩行困難となった場合、加害者側に後遺障害慰謝料を請求するのですが、高齢者ならではの問題が生じる可能性があります。
それは、『交通事故以前から歩行に障害を生じていなかったかどうか』ということです。
交通事故の損害賠償は「原状復帰」、つまり交通事故直前の時点の状態に戻すという賠償範囲にとどまります。
例えば自動車であれば、バンパーが壊れたのならばバンパーを直すまでが賠償範囲になります。
それを越えてボンネットやエンジンを新品に直せと請求するのは、原状回復から外れているため、被害者と言えども請求することはできません。
交通事故以前の症状は差し引かれる
では、身体的な被害に関してはどうかと言うと、交通事故直前の状況まで治ったところで完治となります。
歩行に何ら支障がなかった者ならば通常歩行が出来るまで、杖を使用して歩行出来た者であれば杖による歩行が出来るまで回復できればよいということになります
もし、交通事故直前の状況まで回復しなかった場合にはその分を後遺障害と認め、後遺障害慰謝料を支払うということになります。
つまり、20歳の健常者が脊髄損傷の後遺症で歩けなくなるのと、日頃から杖を使って歩行している70歳の高齢者が脊髄損傷で歩けなくなるのとでは、後遺障害慰謝料が変わってくることになります。
「いや、自分は70歳だけど、杖なしでスイスイ歩いていたから、20歳の若者と変わらない。」と言われる方もいるかもしれませんが、裁判の判例では『加齢による運動障害を認める』というものが多く、特に足の障害で通院をしている場合には、『交通事故以前から足に障害があった』として、後遺障害慰謝料が減額される可能性が高いです。
高齢者の場合、交通事故の時点でどれだけ体に障害があったかが焦点となる事が多く、脊髄損傷の場合は足に障害が出やすくかつ治療不可能なため、被害者にとって後遺障害と認められるか否かは大きな問題となります。
加害者側と脊髄損傷の後遺障害について話し合う際には、交通事故に詳しい弁護士に相談をしてからにした方が良いでしょう。
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保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故により脊髄損傷を負い、歩行困難となった場合には、移動に必要な杖や車いすの購入費用のほかに、福祉車両や民間救急車などの移動手段についても請求できることがある。
脊髄損傷による損害賠償の内訳は、大きく分けて積極的損害と消極的損害の2種類があり、もともとの損害に対する補償の性質が異なる。
交通事故で脊髄損傷を負った場合、加害者側に対して請求できる損害賠償項目を把握しておく事は重要である。被害者が該当する損害賠償項目を主張し忘れることの無いよう確認しておかなくてはならない。
交通事故による脊椎骨折から事故後しばらくたって脊髄損傷となるケースもあるので、交通事故による脊椎骨折が原因の脊髄損傷と加害者側に認めてもらうためにも、弁護士に相談した方が良い。