死亡交通事故の保険金の相続は相談して決める事ができる?
【質問】
先日、父が交通事故で亡くなりました。
母は10年前に亡くなっており、父の遺産相続人は私と弟の2人になります。
父は町の小さなパン屋を営んでおり、私もその2代目として一緒に働いていました。
そのため、父名義の店舗兼住宅は遺言書で私が引き継ぐことに、わずかばかりの預金は葬儀代を引いた後は弟と半分ずつ相続することになっており、事前に遺言書の内容を知っていた私と弟は了承していました。
しかし、今回の交通事故により加害者の保険会社から、5000万円近い保険金が支払われる予定です。
もともと、父名義の店舗兼住宅は駅近くの一等地にあり、パンの製造のための什器もあるため、7000万円近い価値があります。
そのため弟と話し合って、遺言の内容に反して交通事故の保険金を弟がすべて受け取る代わりに、店舗兼住宅と父名義の預金のすべてを私が引き継ぎたいと思っています。
遺言書に反して、死亡交通事故の保険金を相続人の1人だけが受け取って、その他の相続分を他の相続人が相続することは可能でしょうか?
【回答】
遺言書は、被相続人の遺産に対して、被相続人の希望する分配方法が記されたものになります。
相続人同士が紛糾した場合には、法定留分に関しては法定相続割合が適応されることが多いです。
遺言書が絡む相続で見落としがちな事実に、「相続人も相続に対して決定権を持っている」ということです。
つまり、被相続人から遺言書で相続を指定されたとしても、相続放棄という形で拒否をすることができますし、相続人同士の同意があればたとえ兄の1人だけに相続させる遺言書があったとしても、兄とその他の兄弟で分けることも可能になります。
つまり今回のケースでも、相続人同士の同意があれば兄が不動産と預金の一切を受け継ぐことは可能です。
しかし、ここで間違えてはいけないのが、弟が相続放棄をしてはいけない点です。
死亡交通事故による保険金の受け取りの権利は相続権に準ずるものですので、父名義の不動産などの相続をしないからといって、相続放棄をしてしまうと保険金を受け取れる権利までなくしてしまうことになります。
後に相続のことでもめたり、相続登記をする際に法務局に聞かれたりする可能性もあるため、相続する内容を記載した協議書を作成して、相談者と弟の記名押印をしたものを2部作成してお互いが1部ずつ保管されることをお勧めします。
もし、作成が難しいと思われるのでしたら、諸手続きを弁護士に一括して依頼すると良いでしょう。
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死亡事故の保険金を受け取りたくない場合、相続放棄をしても良いが、不動産などで相続したいものがある場合には、弁護士に相談をして相続の仕方を考えた方が良い。
お互いに相続人の関係が発生する人が、交通事故などで同時に死亡した場合には、お互いにお互いの相続人となる事は出来ないが、同日に死亡であっても時間がずれていれば順に相続が発生する。
交通事故の症状固定後に死亡した場合の逸失利益の計算は、特別な理由がない限り症状固定時の平均余命により算出される。
内縁関係の相手が交通事故で死亡した場合には、遺族慰謝料や扶養権利に基づく請求をすることができるが、大前提として内縁関係の証明が必要になる。
年金受給者の死亡事故でも逸失利益が認められるが、生活費控除が通常よりも大きくなり、余命が短いことが多いので、金額が思ったよりも少なくなることがある。