むち打ちの順応と慣化により有限となる労働能力喪失期間
交通事故でむち打ちになると、一番の不便を感じるのが首を動かした際に感じる痛みだと思います。
人によっては首を動かさなくても痛みを感じることもあり、仕事どころか日常生活を送るにも支障が出ることがあります。
通常は数日から数週間でむち打ちが完治して、仕事に復帰されることが多いのですが、場合によっては痛みなどが完治せずに「症状固定」という形で後遺症として保険会社と示談することもあります。
その際に問題になるのが、労働能力喪失についてです。
むち打ちのせいで首を動かした際に痛みを感じると言っても、それが交通事故の後遺症として認められるとは限らないからです。
交通事故の被害者の年齢が30代以降であれば、年齢からも肩こりや身体的な老化から、交通事故以前より首に痛みがあることがありますし、痛みは時間が経つにつれ順応・慣化すると言われています。
痛みの順応・慣化とは、「雨の時には古傷が痛む」というような言葉がありますが、「首を急に動かす」などの自分が抱えているむち打ちの痛みが出るパターンを理解しているため、順応した動作をすることができ、慣れてくるということを指します。
裁判所も痛みの順応と慣化を認めており、むち打ちは後遺症として認められることが難しいだけでなく、認められたとしても恒久的に後遺症があるとは認められることが少ないです。
労働能力喪失期間は短めになることが多い
労働能力喪失は、「交通事故の後遺症により仕事の効率が下がる、もしくは交通事故以前のような仕事が出来なくなる」ということですので、後遺症認定されるのが大前提となります。
他の怪我での後遺障害認定の場合は、事故発生時の年齢での平均余命の期間を労働能力喪失期間とするのに対し、むち打ちでは後遺障害認定がされたとしても、順応と慣化という点から1~10年で労働能力喪失期間を打ち切るため、他の後遺症と比べて後遺障害慰謝料が少なくなることが多いです。
そのため、保険会社と交渉したにもかかわらず、むち打ちの後遺障害慰謝料が支払われなかった、支払われても順応や慣化の判例を出されて、十万円程度の後遺障害慰謝料しか支払われなかったという話はよくあります。
交通事故の示談では、弁護士が介入することにより支払われる保険金がアップすることが多いのですが、むち打ちの場合はアップの幅が小さくなることもあり得るので、事前に弁護士とよく話し合ってから、依頼するか決めたほうが良いでしょう。
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交通事故のむち打ちの症状固定をした後も通院を続けた方が、後遺障害認定の時に認定されやすくなったり、示談交渉で有利となることもある。
むち打ちの示談交渉で、早期に示談を受け入れるのはよくないが、示談を引き延ばすのもよくないため、示談の金額などは弁護士に相談をした方が良い。
むち打ちの症状は痛みだけではなく、めまいや吐き気・頭痛など一見してむち打ちと関係のないものが、むち打ちが原因となっている事もあるので、症状が改善するまで治療を続ける方が良い。
交通事故のむち打ちで慰謝料を増額するポイントとして、症状固定まで通院を継続すること、後遺障害等級認定の手続きは保険会社任せにしないこと、交通事故に詳しい弁護士に相談することが挙げられる。
交通事故による死亡者は減っているが、怪我人はそれほど減っておらず、交通事故で怪我をした人の6割はむち打ちになっている。保険会社にむち打ちを否定された場合には、弁護士へ相談するのが望ましい。