異議申立により併合12級→併合9級となり、訴訟を経て合計6000万円以上を回収した事例
事例提供:いなば法律事務所
【事例】
未成年の男性が、アルバイト先の車に同乗していたところ、運転手が高速道路で自損事故を起こした事案です。幸い、生命は無事だったものの、顔面挫創、左手挫創、左中指末節骨骨折等の傷害を負い、①顔面に傷跡がある、②左手の皮膚欠損により左母指の指節間関節に可動域制限がある、③左母指・左示指の先端部の感覚障害がある、④左中指に遊離骨片がある、などの障害が残りました。
労災保険で併合6級(外貌醜状、手指の機能障害)が認定されましたが、自賠責保険では、併合12級(外貌醜状、手指の欠損障害、局部の神経系統の障害)の認定でした。この段階で、交通事故に強い弁護士に相談してみようと思われ、知人の紹介で弁護士に相談されました。
ご依頼後、自賠責保険でもより上位の等級を獲得するため、異議申立をしました。その結果、自賠責保険でも手指の機能障害が認められ、併合9級の認定となりました。労災保険と自賠責保険では異なる等級となりましたが、顔面の傷跡(外貌醜状)について、労災保険と自賠責保険での認定基準の改正時期が異なるため、実際には、ほぼ同一の認定内容となります。
多数の障害を負われていることから、裁判所できちんとした解決をされることをお勧めし、訴訟提起しました。
訴訟では、逸失利益が生じないのではないか等が争点となりましたが、仕事において支障が生じていること等について、丹念な立証を心掛けて判決を獲得したところ、遅延損害金等を含めて、合計で約5700万円を回収することが出来ました。異議申立時に既に自賠責保険金392万円を回収しており、合計で6000万円以上を回収したことになります。
【弁護士からのアドバイス】
記事提供者:いなば法律事務所
■異議申立による上位等級の獲得(後遺障害等級の獲得・確定)
それぞれの被害者に残った後遺症について、個別具体的に判断するのが本来あるべき姿と考えますが、現実には、裁判所は、自賠責保険などの「後遺障害等級」を尊重する傾向にあります。妥当な等級が認定されているか、等級認定段階からお手伝いさせて頂くことが重要と考えます。
■訴訟による解決の選択(解決手段の選択)
訴訟ではなく、示談や交通事故紛争処理センターへのあっせん申立の方が有利な解決ができると考えられる場合もあります。弁護士としては、ご本人やご家族のお気持ちを一番に考えますが、交通事故解決の経験をもとに、予想される争点、予想される加害者側の主張立証の内容、裁判所の判断の傾向などを検討して、ご本人やご家族に、事案ごとに的確なアドバイスをさせて頂くことを心がけております。
本件では、ご本人のお気持ちに加え、相応の後遺障害等級であることや事故から時間がかなり経過しており遅延損害金が多額になることなどから、ご本人とご相談の上で、訴訟という選択肢を取ることにしました。
■丹念な主張立証(訴訟の場合)
訴訟においては、逸失利益が生じないのではないか等が争点となりました。
この段階では、ご本人のお仕事の具体的内容や、生じている具体的支障などについて、丹念な主張立証を心掛けました。
訴訟においては、争点にとって意味のある、説得的かつ具体的な証拠を出来るだけ提出し、裁判所の判断過程を想定した訴訟戦略を立てることが重要と考えております。