事故当時8歳の女子がびまん性脳損傷等の傷害を負い、高次脳機能障害で5級の認定を受け、既払い分2600万円を除いた9000万円で和解した事例
事例提供:弁護士法人アルマ
【事例】
事故時8歳の女子小学生(症状固定時13歳)Aさんは、学校が終わってから塾に行き、その後一人で自宅に帰ろうといつもの道を歩いていました。
いつも通っている道の横断歩道には信号はありませんでしたが、渡り始める前にきちんと確認すれば、あとは車が止まってくれるため、Aさんは横断歩道を渡りました。
そこを脇見をしていた普通乗用車に衝突され、はね飛ばされました。
Aさんは、脳挫傷、びまん性脳損傷、肺挫傷などの傷害を負いました。
Aさんは、事故から5年後の13歳の時点で症状固定となりました。この時点での症状は、頭痛、左上肢脱力、物忘れ、四肢の巧緻運動障害、感情障害等の症状が残り、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として5級2号に該当するとの認定がなされました。
このあと、保険会社から本人への示談提示がある前に当事務所が受任しました。
受任後弁護士から損害賠償の請求書を送付したところ、当初から保険会社に弁護士が付き、治療費、自賠責保険金等の既払金約2600万円を除いて新たに約5100万円を支払うという内容での回答がありました。
事故発生から時間が経過していたこともあり、事故時からの遅延損害金も含め請求していましたが、遅延損害金についてはゼロとの回答、その他の費目についても、慰謝料の算定方法や、治療が長期に及んだことから症状固定の時期を前倒しとするなど、多数の点に争いがあり訴訟での対応となりました。
訴訟では、慰謝料の計算方法や症状固定の時期等の争点については、もともと通常の裁判例に沿った請求をしていたこともありこちらの主張が認められるとの心証が初期に裁判所から示されましたが、争点として最も強く争われたのは後遺障害による症状固定後の将来の介護費用に関する請求です。
将来の介護費用については、特に後遺障害等級3級以上といった極めて重篤な後遺障害が残る場合に認められることが多いもので、5級の認定を受けた本件では当然に認められるというものではありませんでしたが、本件では症状固定後の本人の生活状況、医師による診断内容から、今後一人での生活に支障が生じると考えられたため、1日あたり2000円、就労可能年齢67歳までの将来介護費用を含め請求していました。
この点については、最終的に裁判所も本人の生活状況等から付添の必要があることを認め、1日あたり1500円、67歳までの将来の介護費用約1400万円を含めた和解案が提示され、最終的な解決として、既払金約2600万円を除き9000万円(うち130万円は近親者の慰謝料)を支払うとの内容で和解が成立しました。
【弁護士からのアドバイス】
記事提供者:弁護士法人アルマ
まず、小学生などの若年者の高次脳機能障害が問題になるケースでは、通常であればせいぜい1年程度で症状固定の診断がなされるところ、数年間かかることもめずらしくありません。
特に高次脳機能障害は、周囲の人とのコミュニケーションに問題が生じる場面ですので、低年齢の場合は、何が原因であるかの判断がつきにくい場合もあり、また、症状そのものが見逃されてしまうこともあり、注意が必要です。
介護費用(看護費用)についても、本格的な介護費用までは必要のない事案でも、見守り等の家族の負担が発生する場合も良くあり、その場合は、丁寧に主張立証していくことが重要です。
本件でも、1400万円程度の介護費用が認められています。