弁護士が後遺障害の認定手続で工夫をして後遺障害等級14級が認定された事例
事例提供:吉田泰郎法律事務所
【事例】
この交通事故は、被害者親子が、自動車を赤信号のために停車させていたところ、後方から追突された事故でした。
とくに母親の方のケガが深刻でした。救急病院への入院が必要なほどでした。事故から4か月が経過したところ、加害者側の保険会社の担当者が、「治療打ち切り」ということを言ってきました。しかしながら、事故のあと入院しているようなケースで、4か月で治療を終了させるなどというのは、厳しすぎます。
保険会社の対応に不満をもった被害者親子が、弁護士に相談にきました。
弁護士も、入院するほどの重傷なのに、4か月で一方的に治療を終わらせるという保険会社の対応はいかがなものか、ということを、会社に対して、文書で抗議をしました。
保険会社も、正式に抗議されると、まずいと思ったのか、そのあとは十分に治療を受けるまで、文句は言ってきませんでした。
さて、治療は終了したのですが、母親の身体には、右肩の関節に問題が残ったようでした。右腕を水平までにしか上げることができない状態でした。これは、後遺障害として認定してほしいと思いました。
ところが、治療をしてもらっていた医師に作成してもらった後遺障害診断書には、かなり問題がありました。右肩関節について、「右肩関節に問題がある」ということだけを書いており、それ以上の詳しいことが後遺障害診断書には書かれていなかったのです。
弁護士は、このまま、後遺障害の認定の手続をした場合には、後遺障害の等級として認定されない、「非該当」という判断になるかもしれない、と思いました。
そこで、弁護士は、医師に手紙を書き、後遺障害について「右肩関節に問題がある」ということが書かれていますが、右肩関節に問題が発生した機序を説明してください、という質問をしました。
「機序」という言葉は、専門的な医学用語で、「そうなっているメカニズム」というような意味です。
医師の方は、「機序を説明してほしい」と言われると、「ああ、機序ね」というふうに思い、詳しく説明してくれることが多いのです。
そうしたところ、医師からは、右肩関節について、ある程度の詳しい説明を書いた回答がありました。
弁護士は、これは後遺障害が認定されるだろうと考えて、自信をもって、後遺障害等級の認定手続をおこないました。
結果としては、後遺障害等級14級が認定されました。
弁護士としては、できれば12級をねらいたいと考えていたので、
「14級という認定に対して、異議の申立をしますか?」
ということも被害者に確認しましたが、被害者は、早期に解決する方を望むということでしたので、14級を前提として示談をすることができました。
そもでも、14級とはいえ、後遺障害等級がついたので、400万円ほどの示談をすることができました。
後遺障害等級が「非該当」だった場合には、示談金は100万円くらいだった可能性もありますから、弁護士が的確な判断をしたことで、正当な示談金が確保できたメリットは大きかったと思いました。
【弁護士のアドバイス】
記事提供者:吉田泰郎法律事務所
保険会社の担当者が、ケガの治療の打ち切りを言ってくることに泣かされる被害者は多いようです。だいたい、交通事故のケガの場合、6か月くらいは治療を受けることができますので、十分に大きな事故の場合には、6か月以内に治療の打ち切りを言ってきた場合には、反論できると思います。
保険会社の言いなりになって、治療を打ち切ってしまった場合には、治療を再度継続することは難しくなります。
また、後遺障害の等級認定は、大変に重要な手続です。
加害者側の保険会社にまかせてしまうと、かなりいい加減な処理がされる可能性があります。
できれば、被害者側の弁護士が後遺障害の認定の前から関与して、正しい等級認定をする手伝いをすれば、被害者に有利な認定ができる可能性が高くなります。
交通事故の被害者は、賢く行動しなければ、損をすると考えてください。