むち打ちを人身事故として処理しなくてはいけない理由とは
車同士が衝突し、軽い事故であるため「お互いに自分の自動車を修理することで、終わりにしましょう。」ということはままあります。
交通事故が起こった際には警察への報告義務があるのですが、物だけの被害の物損事故の場合であれば、免許停止や罰金などの行政罰、刑事罰はありません。
それに加えて自動車の修理のために自動車保険を利用してしまうと、次年度からの等級が下がり保険料が高くなってしまうため、『交通事故を起こした当事者間で話し合い、修理費用も自腹で払う』といったことが、軽微な交通事故ではよくあります。
物損事故としてみれば、『損害賠償の示談は当事者間で合意すればよい』ということになりますので、お互いが合意し遂行されれば大きな問題はありません。
しかし、そこにむち打ちが絡んでくると、『物損事故』から『人身事故』に変わってくるため、大きく性質が変わってきます。
人身事故は『相手の身体を傷つけた』ということになりますので、いわば『傷害罪』の一種に当たります。
つまり、人身事故の場合は刑事罰に問われるとともに、免許停止などの行政罰が科されることとなります。
人身事故の重さ
むち打ちは交通事故の中では比較的軽度の受傷であるため、軽く感じがちですがそうではありません。
むち打ちが完治するまでの期間によって、刑事罰と行政罰が変わってきます。
具体的には、『治療期間が15日未満』、『治療期間が15日以上30日未満』、『治療期間が30日以上3か月未満』、『治療期間が3か月以上、もしくは後遺障害が残ったもの』の4段階があります。
刑事罰の場合、罰金刑がほとんどなのですが、12万円~50万円になります。
行政罰は免許の点数で表すと、2点~13点になります。
つまり、一番軽い罰であっても、人身事故扱いならば12万円の罰金と2点の加点は免れないのです。
そのうえ、警察には『前科』として一生記録が残ります。
よく、「タクシーの運転手がむち打ちの治療費として30万円を支払うと言ってきた」と言う話を聞きますが、『12万円の罰金を支払い、免許停止になり1か月以上働けなくなり、しかも前科がつく』となった場合死活問題となるため、運転手からすれば『30万円を自腹で支払った方がまだマシ』ということだからです。
しかし、人身事故にせずに物損事故として警察では処理をし、むち打ちに関しては当事者間で内々で示談した場合、自賠責保険からの補償が受けられない、治療費が受け取った金額以上にかかったが請求できない、万が一後遺障害が残った場合どこからも補償が受けられないといった危険をはらんでいます。
相手側から物損事故としての処理を持ちかけられた場合には、むち打ちなど身体的な損害が無いかきちんと確認して、むち打ちがある場合には人身事故として処理するようにしましょう。
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軽度の交通事故であっても『警察に交通事故を通報。むち打ちの症状が出たら即病院に行き、医師の指示に従い通院を続ける。』という事をしないと、加害者に治療費などを請求できなくなる。
むち打ちの症状があるにもかかわらず、物損事故で交通事故を処理する場合には大きなリスクがあるため、肝に銘じておく必要がある。
交通事故によるむち打ちは医師の診断など第三者による証拠が重要となるため、面倒だと治療を受けない等をすると、のちの示談交渉に大きな支障をきたす。
タクシーの乗車中に交通事故でむち打ちとなった場合、タクシーの運転手は人身事故にはしたがらない傾向があるため、示談交渉が難航することが多い。
軽い事故だからと物損事故で済ませて、後にむち打ちなどの症状が出ても、人身事故に切り替える際に問題が生じる場合もあるため、事前に人身事故になる可能性もあると相手方に伝えておく方が良い。