交通事故の治療で健康保険は使えますか?
【福井県鯖江市の方からのご質問】
先日交通事故に遭い、現在鯖江市内の病院に通院しています。加害者の保険会社からの連絡が遅れ、治療費は全額自己負担となりました。保険会社にその旨を伝えたところ、「健康保険を使って治療してください」と言われました。私は鯖江市の会社の正社員として勤めているため、会社の組合の健康保険証を使った治療費は3割負担で済みます。
しかし、交通事故では健康保険を使うことができないと聞いたことがあるため、使えるのかかなり疑問です。実際、通院している鯖江市の病院にも「健康保険は使えないので全額支払ってください」と言われ、全額支払っています。こちらの過失が0にもかかわらず治療費の立て替え払いをするのは釈然としませんし、支払いが減るのならば健康保険を使いたいと思っています。交通事故の治療で健康保険を使うことは可能なのでしょうか?
【弁護士からのアドバイス】
「交通事故では健康保険が使えない」と言う話をよく聞きますが、結論から先に言いますとそれは間違いで、健康保険を使うことができます。とはいえ、普通の傷病のように病院の窓口に健康保険証を出せば使えるというものではありません。加入している保険組合に、「第三者行為による傷病届」を出す必要があります。厚生省の方からも40年以上前から「交通事故の治療であっても、他の傷病と変わらず健康保険給付の対象となる」と公示しているにもかかわらず、理解していない病院もあるため、「交通事故では健康保険が使えない」という間違った認識が独り歩きしている状態になっています。
弁護士の立場から健康保険を使っての治療のメリットを言うと、結果的に受け取れる損害賠償金の額が増える可能性があることです。仮に加害者が自賠責保険にしか加入していない場合、保険から支払われる治療費などの上限は120万円です。もし、全額負担で治療費が150万円かかった場合、120万円は保険金、30万円は加害者が支払うことになります。しかし、3割負担ならば45万円の治療費は保険から支払われる上、休業補償も上限120万円の中から支払われるため、残りの75万円の範囲で休業補償も支払ってもらえることになります。つまり、実質治療費で手元に残らない費用を抑え、受け取れる金額を増やすというメリットがあります。
弁護士に相談に来られた方の中でも、「この制度を弁護士に教えてもらって健康保険に切り替えてから治療費の負担が少なくなった」、「今まで払った分も健康保険に療養費支給申請をして医療費の7割を返還してもらえた」と言ったケースもありますので、相談者も弁護士に相談した方が良いかもしれません。