高校生の死亡事故。将来、看護師に就職する前提で損害賠償を認めさせた事例
事例提供:吉田泰郎法律事務所
【事例】
被害者は、高校に入学したばかりの16歳でした。
交差点で、4トントラックに、はねられて即死という事故でした。
残された遺族は、大変な悲しみを味わうことになりました。
遺族の方は、弁護士に相談にこられました。
お金を多くもらおうというつもりは、全くない。ただ、死んでしまった我が子の名誉のため、正当にむくわれる必要がある、というご認識でした。
弁護士も、当然、ご両親の気持ちを受けて、被害者のために、正当な主張をおこなうと考えていました。
ご両親がこだわったのが「被害者は将来、看護師になるという夢をもっていた。したがって、将来看護師になる、という前提での損害が賠償されるべきだ」
という主張でした。
被害者が将来、○○になるという意思であった、という論点は、多くの裁判例で争点となることが多い論点です。
被害者の主張が認められた裁判例もあれば、認められなかった裁判例もあります。
今回の事件では、
被害者の方が、「看護師養成コース」のある高校に通学しており、被害者自身が、「看護師養成コース」を受講していたこと。
この高校の「看護師養成コース」は、過去数年間にわたって国家資格合格率が、ほぼ100パーセントであったこと。
被害者自身が、小学生のころから、一貫して「将来の夢は看護師になること」であると卒業文集などに書いていたこと。
などから、裁判所は「被害者は将来看護師になる可能性が高かったのであるから、看護師になることを前提とした損害を賠償するべきである」という判断をおこないました。
このように、被害者がまだ10代であり、将来の進路について未確定な状態であったとしても、具体的に、こういう進路をとる、ということを明確にしており、進学などの点で、将来の進路に向かって努力していることが客観的に明らかである場合には、裁判のうえでは「被害者は、将来、こういう仕事に就くはずである」という判断のもとに、損害賠償の請求をすることができます。
【弁護士からのアドバイス】
記事提供者:吉田泰郎法律事務所
被害者が、まだ中学生や高校生のように、将来の進路が決まっていない場合、多くの裁判例では、
中学卒業の方の賃金の平均値
高校卒業の方の賃金の平均値
という統計資料をつかって、被害者の将来の損害を算定することが多いのです。
もちろん、統計資料にもとづく請求なので、被害者側にとって不利なものではありません。
統計資料にもとづく請求であっても、被害者にとって十分なものであると考えています。
しかしながら、被害者側が、「この子は将来、こういう仕事に就くはずである」という強い期待をもっている場合には、その期待を十分に生かした主張をするのも、弁護士にとって必要なことであると思うのです。
死亡事件について、保険会社側の説明に納得ができない場合には、ぜひ、弁護士に御連絡をしてください。