加害者は未成年・自転車の交通事故。被害者は病院で転倒して症状悪化。弁護士介入後、賠償額が2.5倍以上になった事例
事例提供:重次法律事務所
【事例】
■交通事故事案の概要
・加害者 携帯電話でメールを操作しながら自転車を運転していた中学生
・被害者 経年性の脊柱管狭窄を持つ(が治療歴はない)高齢女性(事故時69歳)
・発生場所 大阪府郊外
・特記事項 事故後、病院で転倒して大幅に悪化、スムーズな歩行困難
・損害賠償額 弁護士介入前の提示111万円 → 介入後の取得282万円
■事案の詳細
1 事故概要と事故後の経緯
携帯電話でメールを操作しながら自転車を運転していた中学生が、歩行中の被害高齢女性(事故時69歳、症状固定時71歳)に背後から激突した交通事故。被害高齢女性は治療期間1年以上(歯科治療は1年8か月)の重傷を負った。
加害者は自転車運転で無保険、しかも未成年者だったが、親の損害保険が使えた。もっとも、後遺障害に関しては、自賠責保険の等級認定が使えず、保険会社は後遺障害がない(等級非該当)前提で少額の示談金(111万円)を提示してきた。
被害者には重い脊柱管狭窄症の症状が出ていたが、69歳だった事故前から脊柱管狭窄の状態があった(治療歴はない)。
また、病院で治療中に転倒したことが症状を悪化させた要因になっており、因果関係が争われる危険性があった。さらに、転倒に関して病院とトラブルになり、担当医の協力は見込めなかった。被害者は転倒後、症状が悪化して、スムーズな歩行も困難になった。
気の毒な状態だったが、事案が難しく、金額は大きいとは言えず、複数の事務所に相談したが、動いてくれる弁護士が見つからなかった。
2 当事務所で相談後の対応
難易度の高い事案であったが(等級認定制度が使えない、病院での転倒による脊柱管狭窄症・脊髄症の悪化、医師との関係悪化、経年性の脊柱管狭窄の存在)、類似事例の経験から、2009年赤い本の裁判官の論文(事故前から頚椎脊柱管狭窄があった場合の素因減額に関する論文)なども引用して賠償金額を主張し、377万円以上で請求したところ、当初提示111万円の2.5倍以上の282万円の再提示があり、本人も納得したため、和解が成立した。
【弁護士からのアドバイス】
記事提供者:重次法律事務所
本件は、脊柱管狭窄症の悪化について、①病院内での転倒、②事故前から経年性の脊柱管狭窄、という2つの特殊要因がある上、③加害者が自転車であり自賠責の等級認定制度が使えない、④被害者が未成年者である、という問題もあり、難易度が高い交通事故の事案でした。
高額事例とも言えず、受任する弁護士が見つからない状態でした。
当事務所でも、気の毒な事案であり一旦受任するものの、大きく増やせなかった場合には辞任もありうる前提で受任し、増額につきトライしました。(1)経年性の脊柱管狭窄やヘルニアの既往症状がある場合、(2)歯牙損傷、のいずれの後遺障害についても経験があり、ポイントを押さえた裁判官の論稿なども引用して保険会社を説得し、対応を求めたところ、当初提示額の2.5倍以上の282万円で和解提示がありました。
本人も、上記金額であればと大いに納得されたため、和解に至りました。
なお、脊柱管狭窄については、手術も検討すべきであり、評判の良い大阪市内の病院を紹介しました。
依頼者に非常に喜ばれた事案の一つであり、比較的小さな事例ですが、交通事故の成功事例として紹介します。