総損害賠償額 相続人のうち1人あたり620万円(全相続人総額換算3100万円)を獲得した事例
事例提供:弁護士法人リーガルプラス
【事例】
被害者の方は、80代半ばの女性で、子どもと同居して年金収入で生活していました。
被害者の方が、店が立ち並ぶ直線道路の信号機のない横断歩道を横断中のところ、自動車に乗った加害者がわき見運転をしたことから被害者の発見が遅れ、衝突してしまい、お亡くなりになった事故です。被害者の方には、子どもが5人おり、この方々が相続人となりました。
加害者加入の保険会社は、当初、全相続人への損害賠償として総額1800万円(相続人1人あたり360万円)を支払うことによる示談を提案してきました。
示談金の内訳としては、被害者の方の本人慰謝料として350万、ご遺族の方の慰謝料として総額750万円を支払うというもので、自賠責保険金と同額の最低額の金額でした。
相続人の方々は当初、一致団結して加害者加入の保険会社と増額を目指して示談交渉をしていました。しかしながら、相続人の方々はそれぞれ境遇が違うことから、早期解決を希望する相続人の方、正当な示談金の獲得を希望される相続人の方がおり、示談についての考え方に違いが出てきてしまいました。
そこで、正当な示談金の獲得を希望される相続人の方お一人からご依頼をいただき、加害者側に対し、裁判で争うこととしました。
なお、早期解決を希望した相続人の方々は、示談に先立って自賠責保険への請求を行うことにしたようです。
裁判においては、主に死亡逸失利益と過失割合が争点となりました。
逸失利益については、被害者の方が80代とご高齢であったことから加害者の弁護士は家事労働分を収入に換算した金額は70代の女性の平均年収の7割程度(約210万円)である旨、被害者の方の家事労働分の収入及び年金収入は5割以上は生活のために使われたであろうから(生活費控除)、その分は差し引いて請求すべきである旨の主張を行いました。
私たちは、被害者の方が一家の家事全般を担って子どもの生活を支えていたこと、子どもには収入がなかったことから被害者の方の収入の3割程度しか生活のために使われたとはいえないこと等を主張・立証しました。
最終的には裁判所から、被害者の家事労働分の収入が約300万円、生活費控除率が3割であることを前提とした和解案の提示がありました。
また、過失相殺については、事故態様から導かれる基本的な過失割合が「被害者の方:加害者=3:7」の事故のところ、刑事事件の記録を精査し、わき見運転の時間が長期に亘ること等を主張したところ、裁判所からは過失割合が「被害者の方:加害者=1:9」であることを前提とした和解案の提示がありました。
最終的には、依頼者の方の獲得額620万円(全相続人総額換算3100万円)での和解が成立し、解決となりました。
【弁護士からのアドバイス】
記事提供者:弁護士法人リーガルプラス
被害者の方がお亡くなりになった事故については、複数の相続人の方がいらっしゃることがほとんどです。
全相続人の示談への足並みが揃えば加害者側に請求をすることに支障はありませんが、各相続人の境遇・生活状況が違えば、本件のように示談についての考えも異なることがあります。
また、離婚した夫婦の間の幼い子どもがお亡くなりになってしまったような場合には、相続人は離婚した父母となりますが、お互いの連絡先を知らなかったり、連絡先は知っていても感情対立が激しく、連絡をとることが苦痛なこともあります。
加害者側の保険会社は、各相続人からの個別の請求を嫌がり、代表者を1人決めた上で全相続人から一括して請求してもらわないと交渉に応じないという対応をとることがほとんどです。
しかしながら、法律上、各相続人の方は加害者側へ個別に請求する権利が認められていますので、意見を異にする相続人がいる場合やその他の相続人と連絡がとれないような場合でも手続きを進めることができます。
他の相続人と示談についての考えが異なってお困りな場合や他の相続人との意思疎通が困難な場合などには、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。