同乗者の死亡事故で4000万円→6000万円と増額した事例
事例提供:吉田泰郎法律事務所
【事例】
この交通事故は、20代の若者の無理な運転が原因で発生した事故でした。
真夜中の午前3時ころ、4人で軽自動車に乗って、普通の道路を時速90キロメートルくらい出していましたので、かなり危険な運転でした。
運転者は、ゆるいカーブを曲がり切れずに、電柱に激突しました。軽自動車でしたので、事故の衝撃で、車体がグチャグチャになっていました。
軽自動車は、事故のときには怖いと思います。
運転者は、軽い負傷ですんだようでしたが、助手席に乗っていた被害者は、ほとんど即死でした。
死亡した被害者の父親が、今回の依頼者でした。
被害者の父親は、とても深い悲しみで、なにも手がつかない状態のようでした。
加害者の方の保険会社から、何回か、電話はあったようですが、これに対して、被害者の父親は、回答する気持ちになれなかったので、回答をしませんでした。
被害者の父親の気持ちを考えれば、やむをえないことであると思います。
ところが、事故から1年後に、保険会社の方から、裁判所に、
「交通事故の被害金額を決めるための調停」
という調停を起こしてきました。
保険会社としては、早く事件の処理を終わらせたいという気持ちだったのでしょうが、被害者の父親は、まさか、加害者の側から裁判所に申立をしてくるとはどういうことだろう、と驚きました。
調停手続は、「話し合い」のための手続ですから、攻撃的なことではないのですが、一般の方としては、裁判所から調停手続の書類がとどいたら、驚くのは当然です。
被害者の父親は、裁判所から書類がとどいたということで、弁護士に、
「どうしたらいいのか、まったくわかりまりません」
と、ご相談にこられました。
被害者の父は、自分では裁判所の手続をすることが難しい、とのことでしたので、弁護士が全て代理して手続をすることとしました。
当初、保険会社の提示金額は4000万円でしたが、弁護士が、法律的な反論を厳しくおこなったところ、調停から裁判手続に移行したあと、判決で6000万円以上の損害賠償を勝ち取ることができました。
被害者の父としては、お金をもらえたことよりも、保険会社が一方的に手続をすすめてきたことに対して、少しは反撃できたことが、うれしかったとのことでした。
【弁護士からのアドバイス】
記事提供者:吉田泰郎法律事務所
保険会社は、交通事故の処理のプロです。また、保険会社はお金がありますから、いくらでもお金をつかって、プロの弁護士をやとって、手続を一方的にすすめてこようとすることがあります。
被害者の方としては、そのような保険会社に対して、対等にたたかうことは不可能です。保険会社が、強引に手続をすすめようとしたときには、それを拒否して、被害者側の弁護士の話をきいてからでも、遅くはありません。
保険会社のペースではなく、自分のペースですすめてかまわないのです。
自分が、手続を進めたくない場合には、進めなくてもいいのです。
そういう、被害者の気持ちを十分に理解したうえで、事件の処理をおこなうことが、被害者側の弁護士の仕事であると考えています。